Steve Wolfhard(スティーブ・ウルフハード)という方がいます。
アドベンチャータイムにおいて、「迷宮列車」「シタデル」「エバーグリーン」「枕の国のフィン」など数々の名作エピソードのストーリーボードを手掛け、日本上陸が待たれるスピンオフ「Fionna and Cake」では監督も務めた製作クルーです。
以前、最終回「冒険は続いていく」の設定資料をSteve Wolfhard氏がTumblrで公開していることを取り上げましたが、氏はそれ以外にもプロモーション用のコミックなどをTumblrやTwitter上で発表しているんですね。
絵もアニメのイメージそのままの柔らかなタッチで絶品、エピソード本編と併せて読むとより楽しめること請け合いの内容となっています。
今回の記事では、そんな氏がSNSに掲載しているコミックや没になったストーリーボードなどについて紹介します。
- ジェイクが死んだとき…
- ADVENTURE TIME CORDIALLY INVITES YOU TO SAVE THE DATE(『ツリートランクの結婚式』のプロモーション)
- PUPS
- EVERGREEN(『エバーグリーン』のプロモーション)
- (無題)
- VAMPS ABOUT(『ヴァンパイアたちの復活』のプロモーション)
- THE MORE YOU MOE THE MOE YOU KNOW(『ビーモの誕生日』のプロモーション)
- DADDY-DAUGHTER CARD WARS(『父と娘のカード・ウォーズ』のプロモーション)
- 1000年後、未来の「ウーの王様」
- 「ツリートランクの結婚式」の没シーン(トロント初登場)
- 「歯を治そう」の没シーン(アリとハエの因縁)
ジェイクが死んだとき…
In honour of the AT finale getting nominated for an Emmy, here's some headcanon that I've been holding onto for a while.
— Steve Wolfhard (@wolfhard) 2019年7月19日
I had the idea that when Jake eventually passes away he'd start growing uncontrollably, sort of like how a dead body can let go of its bowels. pic.twitter.com/OI0sfO3SK2
Wolfhard氏がずっと頭で考えていたというジェイクの死を描いたコミック。
とはいえ念のため書いておきますが、このコミックはHeadcanon(公式ではない)です。あくまでWolfhard氏の個人的な創作ですね。
しかし私、この作品めっちゃ好きなんですよね~。もうウソみたいなスケールのデカさが本当にATらしくって大好き…。
なお、ジェイクの葬儀に親友フィンの姿がありませんが、このコミックにおいては、フィンのほうがジェイクより先に死去している設定であるそうです…。(以前この事を問われたコメントに、wolfhard氏は「Finns dead」と返答していた)。
ADVENTURE TIME CORDIALLY INVITES YOU TO SAVE THE DATE(『ツリートランクの結婚式』のプロモーション)
(ファイヤー王国のシナモンパン)
シナモンパン「あっ マズい…ぼくバーテンダーをやるって約束したんだった!」
(散らかった部屋で、お化粧しているチャーリー)
チャーリー「パパがあたしに何も訊いてこないことを願うわ」
(5・6コマ目 ビーモの前で運動しているフィンとジェイク)
フィン&ジェイク「アンドワン!」「アンドツー!」
(ブローチをつけたバブルガム、鏡の自分に言い聞かせる)
バブルガム「あなたなら出来るわ!」
(ビーモ)
ビーモ「エア、ロマンティックな結婚式でビーモをエスコートしてくれる?」
エア「うん、いいともビーモ!!」
(7・8コマ目・雨の中、だれかの墓をシャベルで掘り返しているランピー)
(結婚式の日、ツリートランクの控室に顔を出したブタさん)
ブタさん「やあ!」
ブタさん「かわいいブーツだね」
これは「ツリートランクの結婚式」のプロモーション漫画で、結婚式が始まるまでの出席者各々の様子を描いています。
ジェイクの子供たちの代表としてチャーリーだけ描かれているあたり、Wolfhard氏は特にチャーリーに思い入れがあるんだろうなぁと思います。
ビーモが「エア(Air)」に話しかけていますが、これは「迷子のビーモ」に登場した「バブル」のことです。泡のバブルは泡が割れて消えてしまった後、「空気」になったのですが、その時点で原語だとキャラ名がバブルからエアに改名してるんですね(マジックマンが魔法を失ったらノーマルマンになるのと同じ命名ルール)。
確かにビーモとバブルは結婚の約束を交わしていましたが、「結婚式でビーモをエスコートしてくれる?」なんて訊いてるビーモが本当にかわいいですね…。ビーモが結婚式が大好きって言っていたのも、ワイアットからの求愛?にやたら動揺していたのも、バブルとの結婚の件があったからなんだろうなー。
ところで、このコミックでは、雨のなかランピーが誰かの墓をスコップで掘っているという謎のシーンが描かれています。
で、「ツリートランクの結婚式」に登場したときのランピーは、ウェディングドレスを着ているんですが、これはストーリーボード上で「ダイアナ妃のドレスと同じデザイン」であると指定されています。
とすると、この墓って⋯?
ランピーが掘り返そうとしているものって…?
PUPS
EVERGREEN(『エバーグリーン』のプロモーション)
(無題)
(アイスキングの顔に手を当てるフィン)
フィン「アイスキングの肌って、冷たい。
でも氷みたいな冷たさじゃなくて、ただ冷たいだけ」
フィン「サメの肌みたいにザラザラしてる」
(涙をこぼすフィン)
フィン「ぼく、なんで泣いてるんだろう…」
(T _ T)
VAMPS ABOUT(『ヴァンパイアたちの復活』のプロモーション)
(デッサンに取り組むペパーミントバトラー)
「こういうの、ワタシは全然ダメだな⋯」
(通りがかったバブルガムが足をとめて)
「あらペパーミントバトラー、これすごくいい感じね!」
(笑顔になるバトラー)
「ヴァンパイアたちの復活」には、ペパーミントバトラーがジェイクの証言をもとにヴァンパイアたちの似顔絵を描くシーンがあって、それに関連した一幕ですね。
THE MORE YOU MOE THE MOE YOU KNOW(『ビーモの誕生日』のプロモーション)
モオ「わが家族へようこそ。小さい子よ。
おまえはきっと何千年も生きるだろう。
時間が目の前に広がっている。お前はなにを選ぶんだい?
リーダー?
アスリート?
子ども?
何があろうと、私はお前に良い心を与えた。
どんな道を選ぼうと、お前はヒーローになれる。
わたしのビーモ…」
冒頭、モオが火を灯している燭台は、「ハヌキア」といいます。
ユダヤ教徒は、毎年12月頃になるとクリスマスの代わりに「ハヌカー」という祭典を8日間行うのですが、ハヌキアはそれに使われる道具です。ハヌキアには9本のロウソクを置けるようになっていて、ハヌカー初日に2本ロウソクを灯し、あとは毎日1本ずつ灯していくんだそうです。
つまり、モオはユダヤ人で、ビーモが誕生したのはハヌカーの期間だったことが示唆されているんですね(ただし、ハヌカーの日程はユダヤ歴で毎年変わるので、西暦でビーモの誕生日が毎年ハヌカーの時期に当たるとは限らないようです)。
DADDY-DAUGHTER CARD WARS(『父と娘のカード・ウォーズ』のプロモーション)
(レディレイニコーンが家でくつろいでいると、チャーリーの声がする)
チャーリー「ピン ポーン!」
レディ〈チャーリーなの?〉
(家のなかに入ってくるチャーリー)
チャーリー「ハーイ、ママ!あたし、お邪魔じゃないよね?」
(チャーリーにお茶を出すレディ)
レディ〈そんなわけないわ、かわいい子。元気だった?〉
チャーリー「ありがと、ママ。あたしは元気だよ!」
レディ〈それは良かったわ。それであなたのボーイフレンドは元気?〉
チャーリー「あはは、ママってば!彼はただのルームメイトだよ!」
レディ〈まあ、私ったらなにも知らなくて。あなたが自分の人生を楽しめているなら、あなたは若いのよ〉
チャーリー「へ、若い…?20代なかばって感じだよ」
レディ〈チャーリー、あなたの20代は、あなたが思っているようなものではないのよ〉
レディ〈ところで、うちの子たちはみんな歳が違うのかしら?〉
(肩をすくめるチャーリー)
チャーリー「とにかく、あー、男の子たちは元気だよ」
レディ〈ふーん…〉
チャーリー「えっと…ねえ、ママ? 少しもらっていいかな、ママの…髪の毛を?」
レディ〈ホホホ、どうして!?〉
チャーリー「それは…」
チャーリー「…計画のためなの」
レディ〈チャーリー、私の子供たちのなかで、間違いなくあなたが一番変わってるわ〉
(レディ、ハサミで髪をちょっと切って、チャーリーに渡す)
チャーリー「whoop!(歓声)」
(抱き合うふたり)
チャーリー「ありがとう、ママ」
(母に肩車するチャーリー)
チャーリー「ねえ、いっしょにDVD観ない?パパはあたしとセーリングに行きたいみたいだけど、急ぐ必要ないよ」
「父と娘のカード・ウォーズ」の、プロローグ的なコミックです。
アニメには入り切らなかったストーリーを漫画として出したのでしょうね。
チャーリーと母レディの交流が描かれるという点で貴重な内容であり、母娘の仲の良さも見ていて微笑ましいです。
1000年後、未来の「ウーの王様」
My comic for the Adventure Time zine (BLE Magazine): the King of Ooo in the 1000+ future wasteland. pic.twitter.com/yuW9kfNwih
— Steve Wolfhard (@wolfhard) 2018年7月27日
1000年以上経った後のこと…
(荒野で叫ぶウーの王)
ウー王「おーい、みんなどこにいるんだ?」
ウーの王は
最後の
生き残りだ!
(地面に倒れこむウー王、起き上がって頭をおさえる)
ウー王「うう、脳に何か異常があるみたいだ」
(帽子をかぶったアリがそれを見て言う)
アリ「アホらしい!」
(ウー王、また倒れる)
(丘で叫ぶウー王)
ウー王「私は一兆歳だ!!!!」
ウー王「うちの犬はみーんな死んでいると思う」
ウー王「私は野生のブタだ!」
ウー王「私は 唯一無二の 本物の ウーの王様だ!!!」
(ウーの王そっくりな人物が現れる)
ウー王2「おお!やあ、私もだよ」
(ウー王はまた倒れてしまい、動揺するもう一人のウー王)
ウー王2「あああ!!!なんてこった!!!」
しばらくして…
(ウー王2とアリが話している)
アリ「わかった。ちょっと待てよ」「あんたはこう言ってるわけだな…」
ウー王2「うん」
アリ2「…ウンチを無くしたと?」
ウー王2「そう。私のおばあちゃんのウンチなんだ」
ウー王2「私にとっては、とても大切なものなんだ。もし見つけてくれたら、たっぷりとご褒美にお金をあげるぞ」
ウー王2「ではさらば、会議がたくさんあるんでね」
アリ「わかったよ」
(ウー王2が去ったあと、アリのもとにウー王1が現れる)
ウー王1「わあ~!私がみつけたこの素晴らしいウンチを見てくれ!」
アリ「ウワッ!!!」
しばらくして…
ウー王1「ハッハッハ!それから彼は自分の帽子とウンチを交換してくれたよ」
ウー王2「ほら、言っただろ うまくいくって!」
ウー王1「うむ、君は本当にこういうことに詳しいな」
ウー王1「で、いつ彼に金を渡すんだね?」
(ウー王2、それには答えず)
ウー王2「ハッハ、次の騙す相手を探しに行こう」
しばらくして…
(夜になって二人は寝ている)
ウー王2「今日は楽しかったよ」
ウー王1「ああ」
ウー王2「なあ、君って本当に一兆歳なのか?」
ウー王1「いや、正直にいうと、私はまだ一か月くらいしか生きてない」
ウー王1「サナギから出たばかりなんだ」
回想:生まれたばかりの頃のウー王「ホットドッグ!私は生きてる!」
ウー王2「おおっ…私はじつをいうと結構歳をとってるんだ。すくなくとも1000年は…」
ウー王1「ぐーぐー」
ウー王2「はぁー(タメイキ) …トロント…」
アドベンチャータイムの劇中には「BLE」というコミック雑誌がたびたび登場しますが、そのBLEがホンモノの雑誌として製作されたことがあり、ATに携わった声優やデザイナーの人々だけにのみ配られたのだそうです。
このコミックは、そのBLEに載せるためWolfhard氏が執筆した作品で、1000年後のウー大陸を舞台に、荒れ果てた世界に生き残ったウーの王様のある一日を描いています。
しかしラストで判明する驚きの事実。後から登場した二人目のほうこそ、私たちがよく知るウーの王だったんですね!!
さらに、この種族はサナギから産まれるという出生の秘密がサラっと明らかにされていたり、このあたりはウーの王様デザインの生みの親であるWolfhard氏ならではの作という感じです(ところで、この種族って、みんな「自分はウーの王」という自認を備えて生まれてくるのか…??)
どういうわけだか荒涼としたさびしい景色が広がる1000年後の世界、ウーの王がトロントの名前をぽつりとつぶやくラストシーンがなかなか切ないです…。
ちなみに、謎多きウーの王様の種族ですが、Wolfhard氏が描いた別のイラストがあって、それによれば彼らを産んでいるのは巨大な白い女王であるそうです。
「ツリートランクの結婚式」の没シーン(トロント初登場)
(窓を壊してドアを開錠し、ウーの王の飛行船に侵入したバブルガム)
PB「支配することは、わが権利よ」
(飛行船のウー王の荷物を調べるバブルガム)
PB「この男は何か企んでる気がするわ」
(あちこちを漁るバブルガム。棚を開けると、書類があふれて落ちてくる)
PB「ああっ!もう!…このあたりの書類を調べれば、きっと何かが出てくるはずだわ」
(近くのドアを開けると、中にトロントが!)
トロント「おい、お嬢さん、ここで何してるんだ?」
(バブルガム、喋るトロントを無視して紙を投げつけ、)
トロント「ここは俺たちの私有物だぞ…」
トロント「うわっ」
(トロントをスーツケースに閉じ込める)
トロント「あんた!何者だ!おい!」
トロント「これは完全に違法行為だ!タダじゃすまないぞ!あんたいったい誰だよ?!」
PB「…ペパーミントバトラー」
トロント「あんたヤバイことになるからな、ペパーミントバトラー。俺はちゃんと資格のある弁護士だ、残りの人生を法廷で過ごす覚悟をしとくんだな…」
(バブルガム、ラジオを流してトロントの声をかき消す)
PB「支配することは我が権利、支配することは我が権利、支配することは我が権利よ…」
(言い聞かせるように唱えながら、まだ飛行船の物品を漁り続けるバブルガム)
「ツリートランクの結婚式」の没シーンですが、読んでのとおり、実は本来この時点でウーの王の手下トロントが初登場する予定だったんですね。
没になったのは時間的な都合だと思いますが、あまりに無法で強引なバブルガムと、ここでは完全被害者なトロントとのやりとりが面白いので映像化されなかったのがもったいないです(名前を訊かれてとっさに「ペパーミントバトラー」と答えてしまうバブルガムも笑えるw)
ちなみにこのストーリーボードの興味深い記述は、トロントが「Shiba inu」と説明されていることで、実はトロントって「柴犬」なんですね。
私はてっきりトロントを長い間タヌキだと思っていたので、これを見たときは驚きでした。
「歯を治そう」の没シーン(アリとハエの因縁)
(スクリーンに映画が上映される)
~アリとハエ~
これはアリとハエの物語だ。
ある秋。アリたちは厳しい冬に備えて、一生懸命、食べ物を収穫していた。
通りすがりのハエたちが、収穫の様子を見るために立ち止まった。
彼らはアリたちに言った。
「パーティーしようよ! 食べ物なんてそこらじゅうにあるのに、そんな必死に働くなんてバカバカしいよ! 何でも唾を吐きかけて舐めればいいんだからさ。唾を吐けば何でも食べられるのに、どうしてわざわざ穀物や種を集める必要があるんだい!」
「さ、パーティー開いてキスしようよ!」
「愚かなハエたち」アリたちは言いました。
「冬が来たら唾を吐くものが何もなくなってしまう。その時はどうするんだ?」
「冬になったら僕たちは死んじゃうけど、奇妙な卵は凍らせておくさ。いいじゃないか、キスしようよ!」
アリたちはハエを無視しようと全力を尽くし、畑で働き続けた。
しかし冬が来ると…
アリたちは恐ろしい犯罪に気づいた…
ハエたちがアリたちの食べ物を全て唾で汚していたのだ。
(プロジェクターの傍らに立つ女王アリ)
女王「その冬、多くのアリが死んだが、我々はその経験によって、より強くなった」
(映画のしめくくりの文章)
「この物語の教訓…
ハエたちが我々の食べ物に唾を吐こうとするならば、
我々はヤツらの奇妙な卵を食べる。
そして我々は、歯の治療を兵士たちに報酬として支払うのだ」
おわり
この回は、フィンが「アリ」に自分の虫歯を治療してもらう見返りに、アリと敵対する「ハエ」の手下である「ミミズモンスター」と戦うことになる、というストーリーです。
しかしミミズを雇っているというハエの事がほとんどわからず、そのハエもラストに少し姿を見せるだけという謎めいた奇怪な話なのですが、このように元々はアリとハエの因縁を描いた映画を女王(将軍)から見せてもらうはずだったんですね。
結果的に完成したアニメではハエが言葉でしか語られないイマイチよくわからない敵という扱いになっていますが、個人的にはあのハエの詳細が語られないことによる奇怪なムードも悪くないと思えます。