ゲームの感想
今回紹介するゲームは、「アドベンチャー・タイム ネームレス王国の3人のプリンセス(Adventure Time: The Secret of the Nameless Kingdom)」です。
このゲームだけは日本でも発売されたので、プレイしたことがあるATファンも多いのではないでしょうか。
取り上げるのもいまさら~っ!…て感じですが、せっかくアドベンチャータイム専門ブログみたいなことをやってるので、やっぱり感想を書いておこうと思います。
本作は「Adventure Time: Hey Ice King! Why'd You Steal Our Garbage?!!」(2012)、「Adventure Time: Explore the Dungeon Because I DON'T KNOW!」(2013)に続く、WayForward製作のアドベンチャータイムのゲーム化第三弾です。
(ちなみに前作Explore the Dungeon Because I DON'T KNOW!からグラフィック素材を流用して作られていたりします。フィンとジェイクのほか、マーセリンやフランボやマジックマンとかサブキャラまでかなり細かく流用されてますね)
プラットフォームは3DS・PS3・VITA・Xbox360で、2014年に発売されました。やや遅れて、日本語版は2016年に発売されています(ただし日本版はXbox360での発売なし)。私は3DS版をダウンロード購入して遊んだあと、PS3版も購入しました。
物語の舞台はゲームオリジナルの地域である「ネームレス王国」。この国は3人の慈悲深い三姉妹によって築かれ、完成した国を導くリーダーを決める時期にきていましたが、なんと戴冠式を目前に姉妹が3人ともいなくなってしまったのでした。消えた3人のプリンセスを探し出し、そして誰かに国を治めてもらうため、フィンとジェイクのネームレス王国における冒険が始まります。
本ゲームのフィンは草の剣を自由に使いこなしているので、アニメ本編の時系列に当てはめれば、シーズン5の「草の剣」からシーズン6の「目覚めの時」までの間に起こった出来事ということになるのでしょう。
前々作(Hey Ice King! ~)も「リンクの冒険」そのまんまなところがありましたが、開発陣は相当ゼルダが好きらしく、本作は「神々のトライフォース」を真似したトップビュー型のアクションアドベンチャーゲームになっています。
道を発見した時の効果音、草を刈ったらアイテム出現、ブーメランならぬバナナラング、空き瓶ならぬ保存バッグ、壁を爆弾で壊すアクション、体力を回復する妖精、泉にアイテムを落としてパワーアップ、ボス部屋用の大きなカギ等々…笑えるくらい「神トラ」そのまま!私は本来の順序とは逆で、この「ネームレス王国」のあと「神トラ」をプレイしたんですが、なるほどソックリでした。
そんな本作最大のウリは、なによりフルボイスでアニメ版の声優さんの声が聴けること!!
フィンとジェイクはもちろん朴璐美さんと斎藤志郎さんだし、それ以外のキャラも冠野智美さん、丸山壮史さん、太田哲治さん、上田燿司さん、かぬか光明さん等々アニメ版そのままのキャスティングが実現されています。代役だったのは、唯一パーティーパットが井上和彦さんではなかったくらい?
ちょっとした会話シーンも基本ボイス付きなので、全体としてかなりの分量。フィンとジェイクがいっぱい喋ってくれます。これをきっちり日本語に吹き替えてくれたのには感謝しかありません。
もうね~、お馴染みのフィンやジェイクの声が聴けるだけで、買って良かったなあと思いましたもの!
ちなみにオリキャラであるネームレス王国のプリンセスたちも、慶長由香さん、池田果奈子さん、中司ゆう花さんとアニメ版でおなじみの方々が起用されているのがナイスなキャスティングでした。
イベントシーンは立ち絵が表示されるだけのシンプルなスタイルですが、声優さんたちの声があることによって、本当にアニメのアドベンチャータイムを見るのとほとんど変わらない感覚で物語に没入できます。私は日本語ローカライズされてないATのゲームも一通り楽しんでプレイしていますが、やっぱりこうして日本語版キャストで吹き替えられているのを聴くと印象が全然違いますね。
このボイスを聴くためだけでも、ファンにはプレイする価値があると思います。
そういうわけで、日本語フルボイスというだけでもファンとしては興味をそそられるわけなのですが、肝心の内容について言うと、これが結構手ごわい。手放しではちょっと薦めにくいです。
本作、初プレイ時はなかなか苦労したんですよね。
ゼルダのオマージュといえばピンとくるかと思いますが、「謎解き」がメインであり、次々と出現する謎・パズルに対して、「どうやったら先に進めるのか」をプレイ中は頭を使って考え続けることになります。
まず、マップがめちゃくちゃ広い!ゲームをクリアするために訪れる必要のあるキャラクターやアイテムは各地に散らばっていているので、ノーヒントで進めようと思ったら、端から端まできっちり回って、どこに何があったか誰がいたかを覚えておかないと解けません(私は広すぎるマップ探索に心折れて、攻略サイト解禁しました)。
ゲーム中には、合計4つのダンジョンがあるんですけど、どちらかっていうと、ダンジョン内部の謎解きより、ダンジョンに入るための条件達成のほうに苦労しました。特定のアイテムを特定のキャラに渡しにいく、みたいな工程がたびたびあるんですが、マップが広くてそのキーとなるキャラなりアイテムなりを探し出すのが大変です。
「序盤から訪れることはできるけど、クリアできるのは後半になってから」みたいな場所が多いのも戸惑うポイントで、その時点では現在の進行に関係あるのか無いのかわからず、その場所で無駄に時間使ってしまったりしましたね。
一応、ピローミントバトラーというキャラが進行度に応じてざっくりしたヒントを出してはくれますが、細かい謎解きには基本まったくヒントはありません。ダンジョン内の仕掛けの類にも説明はなく、プレイヤーが自分で触ってみて仕組みを理解する必要があります。
例えば、道を塞いでいるキャラから「面白いことが見つからないかぎりここを動かないから」と言われるイベントがあるんですけど、その「面白いこと」が一体なんなのかわからなくて進めなくなりマジで悩みました!
つまり、見た目からして昔のゼルダ・レトロゲーム風なんですけど、このヒントの少なさ、プレイヤーが歩き回り試行錯誤して自力で攻略法を発見していくデザインなど、設計思想的にも昔の洋ゲー的な突き放したゲーム性の再現になっているわけです。
これを「ノーヒント上等、なんとか解いてやるぜ!」と奮起できるかあるいは「こんな不親切なゲームやってられるかよ!」と思ってしまうかが評価の分かれ目であり、やっぱり全体としてはハードルが高いゲームかなあと思います。
私はゼルダも得意じゃないんですが、こういうがっつり謎解きにフォーカスしたゲームってちょっと苦手なんですよね。自力で謎が解けた瞬間は気持ちいいんですけど、解けるまでに悩んでる時間に生じるストレスのほうが上回ってしまうのです(お前がアホだから解けないんだろ!と言われるとそれまでですが…)。
ストーリーに関して言うと、ATのゲーム化のなかでは、いちばん独自性が強い内容となっています。前作や前々作が「アニメに登場した場所・キャラ」の引用によってほぼストーリーを組み立てている原作準拠・ファンサービス路線だったので、三作目はオリジナル要素中心のストーリーということになったのでしょうか。
冒険の舞台であるネームレス王国は完成したばかり(?)というわけで、たくさんの人が住む町などは無く、どこへ行ってもモンスターしかいないのが残念なところで、ロケーションとしての面白さ、魅力はいまひとつに感じました。ただし、各プリンセスの「神殿」は実は旧文明の廃墟であることが見え隠れしているのは、ATらしくて面白かったですね。
王国各地を回って3人のプリンセスを探していくうちに、やがて国を揺るがす大事態に発展していくという筋書きで、後半の展開は打って変わってシリアスだったり、骨子は悪くないです。
ただ、キーパーソンであるプリンセスたちとフィンとの会話イベントが少ししかなくて、彼女たちが背負う運命に深く思い入れるより前にエンディングになってしまった印象でした。
前作みたいにプリンセスたちからクエストを受注することで交流が深まっていくとか、そういうのがあれば良かったと思うんですけどね。それぞれのプリンセスはとてもキャラが立っていてカワイイので、これといった交流がないのがもったいなかったです。
また、顔見せ程度のチョイ役でストーリーに深く絡んでくるわけではありませんが、マーセリン、ランピー、アイスキング、シェルビーなどアニメでおなじみのサブキャラたちも登場してくるのが嬉しいところ。短い出番ながら、それぞれ印象的な登場シーンになっています。
…で、このゲーム、プレイヤーの選択によってエンディングが変化するマルチエンディングを採用しているんですが、この終盤がわりと衝撃的というかつかみどころがないというか、なかなか煙に巻くような展開です。
まあ、きれいに着地する話よりは、後になっても意味を考え続けてしまうようなストーリーこそATらしい気もしますしね。これはこれで「アニメのATで時々ある、よくわからないエピソード」みたいな感触がよく再現されているように思いました。
というわけで、評価の上でいろいろ気になる点はありますが、唯一日本で発売されたアドベンチャータイムのキャラゲーとして代えがたい存在感のある作品。
今ではソフトがプレミア化してるので手に入れるには結構な出費を覚悟する必要がありますが、なんてったって日本語吹き替え版キャストによるフルボイスが聞けるので、興味があるなら一度プレイしてみる価値はあると思います。
攻略動画
いつもならゲームの攻略情報をいろいろ書くところなんですが、本作「ネームレス王国」に関しては、既にちゃんとした攻略サイトを作っておられる方がいるので、改めて私が書くことは正直言って特に無かったんですよね。
というわけで、今回は攻略動画を製作しました。
youtubeなど動画サイトをのぞいてみると、実況プレイはあっても、簡潔にプレイ内容をまとめた動画はまだ存在していないようだったので、動画制作は素人ですが作ってみた次第です。
ラストまでたどりつけなくてプレイをやめてしまったとか、進めなくて困っている人の助けになれば幸いです。
余談① 他の作品との関わり
「ネームレス王国」での冒険はゲームオリジナルの設定ですが、以降のゲームやコミックに言及があったりします。
ゲーム化作品として次回作である「Adventure Time: Finn & Jake Investigations」 では、ネームレス王国の戴冠式の進行を務めたピローミントバトラーが3Dになって登場します!
こちらでは、アイス王国をアイスキングから奪ったランピーが、ピローミントバトラーからプリンセスの任命を受けようとするストーリーが描かれます(ネームレス王国のプリンセス三姉妹が登場しないのは残念です)。
また、無印コミックシリーズの最終回であるIssue75では、ウー大陸中の王国の名前が列挙されるシーンがあるのですが、そこで「Nameless Kingdom」の名がちゃんと呼ばれていたりします。
余談② 「ナイトメアプリンセス」のこと(※ネタバレ注意)
本ゲームは基本的にアニメ本編とは関係ないアナザーストーリーと解釈していたのですが、少々気になるところもあります。
ゲームには「ララバイプリンセス」「スランバープリンセス」、そして「ナイトメアプリンセス」という3人のプリンセスが登場するのですが、「ナイトメアプリンセス」というキャラ名は、アニメ128話「船上の悪夢」に登場した一つ目の謎のキャラと同じです。
これって当初、深い意味は無くたまたま名前が被ったのかな?と思っていたのですが、ゲーム最後にモンスター化したナイトメアプリンセスは、「船上の悪夢」のナイトメアプリンセスとよく似た姿に変身するのです。
翼の生えた雲型の頭部に、大きな目がひとつ…カービィのクラッコみたいですが、よく似ていますよね。
しかし、じゃあ「ネームレス王国」のストーリーがアニメ本編と正式につながっていたりするのかといえば、それも違う気がします。ネームレス王国でナイトメアプリンセスと戦った記憶がフィンにあるのなら、普通に考えて「船上の悪夢」のナイトメアプリンセスに出会ったときにはもっと顔見知りらしい反応をするはずじゃないかと思うんですよね。
おそらく、ゲームに登場したナイトメアプリンセスのキャラがなかなか良かったので、後にアニメ「船上の悪夢」回でキャラ名とデザインを再利用したとか、そんな程度なんじゃないかとは思います。
自分用メモ・石碑の文章
・ネームレス城前の石碑(右)
この小さく質素なろうそくの炎は、正しく扱えば漆黒の闇も照らす。その心の内に燃える希望のように扱い、勇気を送り出そう。
・ネームレス城前の石碑(右)
この考えが道を照らす
もし他の手が無駄ならば、こう言うだろう
「頼むから入れてくれ、な?」
・南の石碑
「私は最も悪そうな感じの建物を選んだ。力を合わせ
て、国の中央に城を作った。ただ、姉妹の二人がもう少
し積極的に手伝ってくれたら…」
・南東の石碑
「誰かがいっしょうけんめい作った建物をそのまま使っ
て、王国を作るのは悪い気がするの。でも見捨てられた
ものは…使ってもいいでしょ? -NP」
・東の石碑
カゲル ここに 眠る。
・北東の石碑
「この地に居ついた理由は、いい大きさだったから。端
のほうはきれいじゃないけど、土地の広さはいい感じな
はず。」
・ネームレス城の左上の石碑
最初は建物といえる物が3つしかなかった。一つは長い
廊下で音響がいいからララバイが気に入った。二つ目は
不気味な程静かだからスランバーが好んで選んだ。
・北西、氷の洞窟にある石碑
スミマセン。ボク ハ チョット ニホンゴ ガ ハナ
セマス。
・南西の石碑
短い名前のほうが絶対良い。
・南西の石碑2
ジャンプしてみて