ふるやの森

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【アドベンチャータイム】「フィンの父親が偉大な戦士」だったボツシーンを読む

フィンの実の父親マーティンは、監獄「シタデル」に収監されている罪人として、初登場します。

もともと、マーティンがシタデルにいることをフィンに教えたのはビリーでした(「ビリーのリスト」回)。これを謎に感じた人は多いと思います。どうしてフィンの父親がシタデルにいることを、ビリーが知ってるわけ?もしかしてマーティンをシタデルに送ったのはビリーだったの?…というのは想像しますよね。

実は、シーズン4の最終回「悪い夢」の初期構想では、フィンの父親をビリーがシタデルに送りこんでいたことが示されるはずだったようなのです。

アドベンチャータイムのストーリーボードは無料で数多くが公開されており、「悪い夢」のストーリーボードを見て見ると、ボツになった「フィンの父親」について語られるシーンが確認できます。

(↓こちらのページ)

www.scribd.com

 

ボツになったシーンは、教えの書が起動しブッコがプリズモのいる「時間の部屋」についての解説を喋り、ビリーに憑依したリッチが「そこにリッチを閉じ込める」と言ったその後に続く予定でした。

ストーリーボードに割り振られているナンバーでは143~155あたりです。

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(シタデルのホログラム映像を指さすビリー)

BILLY:and send him here to kill him.

ビリー「そしてリッチを殺すため、ここに送り込むんだ」

Booko:ONE OF THE MOST COMMONLY AccessED DIMESIONS, BY WAY OF MAGIC PORTAL DIMENSION CALLED THE CRYSTAL CITADEL! THE ABSTRACT SPACIAL MATRIX OF THE CRYSTAL CITADEL MAKES IT EASY TO ENTER BUT NEARY IMPOSSIBLE TO LEAVE.

ブッコ「魔法のポータルによって出入りする数ある次元の中でも、最もよく使われるものの1つに、クリスタル・シタデルと呼ばれるものがあります。抽象化された特別な空間であるため、クリスタル・シタデルに入るのは簡単ですが、出るのはほぼ不可能です」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(剣を持った屈強な戦士が、ビリーらしき手によってポータルに押し込まれ、シタデルに送り込まれるホログラム映像が流れる)

Booko:FOR EONS THIS DIMENSION HAS BeeN USED AS A PRISION TO HOLD THE MOST DANGEROUS CRIMINALS IN THE MULTIVERSE YEARS AGO GREAT WARRIOR OF OOO WAS UNLAWFULLY CAST INTO THE CRYSTAL CITADEL

ブッコ「この次元は何年も前から多元宇宙の最も危険な犯罪者たちを収容するための監獄として使用されてきました。 何年も前にウー大陸の偉大な戦士は、不当にこのクリスタルシタデルに投げ込まれたのです」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

booko: AND TO THIS DAY REMAINS LOCKED IN BATTLE WITH THE INMATES

ブッコ「そして、今日もなお、戦士は閉じ込められたまま収容者たちと戦っています」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

BILLY:THAT'S YA DAD

ビリー「それが君の父親だ」

FINN:Wuh?…

フィン「えっ?」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

FINN:WAIT WAIT…MY DAD IS JAKE'S DAD.

フィン「待って、待ってよ。僕のパパは、ジェイクのパパだ」

JAKE:FINN

ジェイク「フィン」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(フィンのそばに寄るジェイク)

JAKE:PoPs and MA’AMS Found you IN THE FOREST… You WERE ABANDONED AND SITTING ON POO…

ジェイク「パパとママは、お前を森で見つけたんだ…捨てられて、うんちの上に座っていたのをよ…」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(驚いたフィン、表情を失い)

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(ジェイクの鼻に触れて)

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(これは夢か?と自分の頬をつねってみる)

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(渋い表情のフィンをハグしようと、手を伸ばすジェイク)

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

(フィンをハグするジェイク)

JAKE:WE'LL ALWAYS Be BROTHERS

ジェイク「いつまでも兄弟でいような」

JAKE:It's kinda crazy that you DIDN'T FIGURE IT OUT ON YOUR OWN

ジェイク「お前、自分では気づかなかったなんてよ、どうかしてるぜ」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

FINN:THANKS

フィン「ありがとう」

 


 

「"The Lich" Storyboard」より

JAKE:I LOVE YOU MAN

「愛してるぜ、相棒」

FINN:I LOVE YOU TOO MAN

「僕も愛してるよ、相棒」

 


 

 

以上が、ボツになったストーリーボードでした。この後は、完成した映像と同じで、フィンたちがバブルガムの宝石を取りに行くシーンに繋がっています。

こうしてボツシーンを確認してみると、「フィンの父親がシタデルに収監されている」「リッチの目的はシタデルに行くことだった」という部分については、その後「ビリーのリスト」「目覚めの時」「シタデル」までの一連のエピソードに再利用されているのがわかります。

興味深いのは、ボツシーンではフィンの父親が「偉大な戦士」とされていて、実際に登場したフィンの父親マーティンの設定とは大きく異なることです。おそらくですが、当初の構想ではフィンの父親は「強くて偉大な正義の戦士」という王道的なキャラクターを考えていて、でもそういうのってありがちだからやめてしまったんじゃないかと思います。その代わりに考えられたのがマーティンみたいな人格破綻者の悪人だとすると、何とも極端な変更ですが…。

そして、重要なのは、ホログラム映像に「ビリーらしき手がフィンの父親をシタデルに送り込んでいる」表現があることでしょう。ストーリーボードには「BILLY'S HANDS?」とやや曖昧な説明がされていますが、「なんでビリーがフィンの父親がシタデルにいることを知ってるのか?」という点から考えても、やはりビリーがフィン父をシタデルに収監した張本人なのだと思います。

結局このシーンはボツになってはいますが、「ビリーのリスト」回でマーティンがシタデルにいることをビリーが知っていたのも、ボツシーン同様ビリーがマーティンをシタデルに送り込んでいたから…と解釈するのが自然に感じます。

「悪い夢」からなんでこの一連のシーンがボツになったのかを考えてみると、プリズモの登場とリッチの悪だくみに加えて、さらにシタデルとフィンの父親の話までこの時期に登場させるのはストーリーを詰め込み過ぎと判断されて、フィンと父親の件はもっと後に回すことになったんじゃないかなあと想像してます。その過程で、フィンの父親像も変更されたのではないでしょうか。

シタデルの造形もその後アニメに登場したのとは違っていますし、シタデルが「入るのは簡単で、出るのが難しい」と語られているのも、実際にアニメに登場したシタデルの設定とは違います。ストーリー構想の練り直しが色々とあったようです。