ふるやの森

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【アドベンチャータイム】アイスキングが主役!のめっちゃかわいいコミック「ICE KING」

今回紹介するのは、アイスキングが主人公のコミック、「ICE KING」です(そのまんまのタイトルだ)

ストーリーはEmily Partridge氏とPranas Naujokaitis氏の共同(たぶんストーリー原案と脚本みたいな関係のようです)、絵はNatalie Andrewson氏が担当しています。

Emily Partridge氏はアニメ本編のストーリーボード製作クルーであり、「フットボール」や「バナナもいろいろ」などの回に参加された方です。この「ICE KING」のコミックに手を伸ばしたのも、アニメのスタッフであるPartridge氏がストーリーを書いているという点で興味を持ったからなのですが、これが絵も話も期待以上に良かったですね。お気に入りになりました。

 

 

ある日の朝、フィオナとケイクの甘い夢から目を覚ましたアイスキングは、愛するペンギンのガンターがいつのまにかいなくなっていることに気づき、激しく動揺します。

ガンターを求めてあちこちを必死で探し回るアイスキング。フィンとジェイクのツリーハウス、死の国、ランピーの丸太の中、さらにはバブルガムのところまで探しに行っても、ガンターは見つかりません。

しかたなくアイス王国に帰ってきたアイスキングは、冷蔵庫に紙が貼ってあったことにいまさら気が付きます。それはなんと「ダークマジスター テンプリ マーブル(Dark Magister Templi Marble)と名乗る人物からの、ガンターを誘拐したという犯行声明文!

紙を嗅いでみて臭いが魔法使いっぽいことに気づいたアイスキング(って、魔法使いに特有の臭いがあるの?)、マーブルの手がかりを求めて魔法使いの町へとやってきます。

町では、あちこちで魔法使いたちが秘密結社の仲間同士で集まっており、それを見たアイスキングはみじめな気持ちになってしまいます。

アイスキング「なんでワシはクールな魔法使いの秘密結社に入れないんじゃ!ワシはクールじゃ!イケとる!一緒なのに!不公平じゃわ!」

そこへ、アイスキングと友人たちの秘密結社「ジュゼッペ」の一員である、アブラカダニエルが通りがかります。

アイスキング「アブラカダニエル?うえ、あいつは第一級の負け犬じゃ」

アブラカダニエルは結社の友情の証である指輪を示しますが、アイスキングは知らん顔で、アブラカダニエルを泣かします

アブラダニエル「ほら…あの時みんなで旅行へ行ったよね?ジュゼッペと一緒に?それで僕たち独自の小さな魔術の秘密結社を結成したよね?」

アイスキング「うーーむ。ああ、そのことはなーんも覚えとらんわ。お前はそのジャイロなんとかいうので楽しんでおれ」

アイスキングは友人ロンジェームスの店を訪れたものの、店にあった魔法のアイテムではどうもマーブルの存在へはたどりつけません。

と、そこへ1人のカッコよさげな魔法使いが現れます。

魔法使い「僕がお手伝いできると思うよ!」

ロンジェームス「わっ、なに?ほかに誰かここにいるなんて知らなかった!!」

アイスキング「おぉぉ、彼めっっっっっっっっっちゃカッコイイのう!!」

魔法使い「どうやら恐ろしいことのようだね…」

アイスキング「そうじゃ、奴はワシのペンギンを盗んだんじゃよ。奴を知っておるのか?」

魔法使い「…ダーク・マジスターがまたも卑劣な一撃をくらわしたんだ!」

彼によれば、マーブルはこの土地において最も暗く最も邪悪な魔法使いであり、 何ヶ月も前、最も強力で最もクールな魔法使いたちによる最も壮大な魔法使いの戦いでマーブルを倒そうとしたものの、マーブルを除く全員が陰惨かつ残酷な方法で命を落としたのだと言います。マーブルの影響力は、疫病のように今日も世界に感染し続けており、ある日はペンギンを盗み、次の日には村を破壊する…もはやマーブルは自分の視界に入るものすべてを破壊するだろうとのこと!

そして彼の秘密結社はマーブルを追う計画を立てていると言います。彼はなんとアイスキングをクールと評し、仲間に誘ってきます。クールな魔法使いに自分をクールだと認めてもらえて、アイスキングは大喜び。

さてアイスキングは新しい仲間、クールな魔法使いたちに良い印象が与えられるようにと、マーセリンに自らのイメチェンを頼みます。

この後、マーセリンとさらにバブルガムも加わって、ショッピングセンターで買い物するパートが始まるのですが、脱線気味なこのあたりのストーリーがまた面白いんですね。

マーセリンとバブルガムがノリノリでアイスキングをコーディネートしていったり、ゲームショップに4時間も居座りゲームしまくって店員を泣かせるフィンとジェイクがいたり、じつはマーセリンがブレックファーストプリンセスのクレカを盗んで買いものしまくっていたというひどいオチがあったり、このパートはおなじみのキャラがたくさんでてきて楽しいです。

シロップガード「陛下...何者かが王家のクレジットカードを盗みました!まことに恐れ入りますが、高額な請求により……ブレックファースト王国は破産です!」

ブレックファーストプリンセス「マーセリン!!(怒)

バブルガム「あは!彼女がやってくるときのために備えておいたほうがいいわよ」

アイスキング「マーシーはいつも準備万端じゃよ」

このあと、ブレックファーストプリンセスがマーセリンを襲撃します

イメチェンも済んだアイスキングは、薄情なことにかつての仲間たちに一方的な別れを告げます。

アイスキング「見ろ、ワシは今、新しいグループと一緒にやっとるんじゃ。クールなグループとな。だからワシはもうお前たちのような者とは付き合えないんじゃ。ワシのストリートでの信用が台無しになるかもしれんからな。悪気はないんじゃ」

アイスキング「だからな、さらばじゃ、負け犬よ、これまでの我が人生で一度も会ったことのないクールではない魔法使いたちよ!」

命の魔法使い「うーーーー!!あいつにはもうたくさんだ!」

アイスが痛がってるのは、命の魔法使いが能力でアイスに命を与えちゃったらしい!

そうしてアイスキングはいよいよ秘密結社「ダークムーンエスバッツDARK MOON ESBATS)」のメンバーと対面します。

メンバーは若者ばかりで、アイスキングを結社に引き入れたリーダーのロード・レーザートロン三世(Lord lazertron the third)、ホログラム魔法の女王ペニー、強力な催眠術の使い手ハムボーン、闇の魔法使いアリステア・ブラックタイド、殴る魔法(物理)が得意なボブの5人!

左より、ボブ、ペニー、レーザートロン、ハムボーン、アリステア

カッコイイ彼らの仲間になれたことに大興奮のアイスキングは、メンバーとともに彼らがトレーニングと称する活動に参加することになりますが、しかしやることといえば、路上でスリをやったり、酒を盗んだり、コンビニの商品を大勢でかっぱらったり、犯罪行為の片棒かつぎばかり…

アブラカダニエルやロンジェームスは、アイスキングがそんな不良たちとつるんでいるのを見て怪しみます。

緊急会議に集まったジュゼッペのメンバーたち(アブラカダニエル・命の魔法使い・ロンジェームス・葉っぱ男・帽子くん)。すっかり変わってしまったアイスキングを結社から追放するか留めるべきか多数決で決めようとします。悪い仲間とつるんで腐ってしまったアイスキングにもはや居場所はない!と命の魔法使いは怒りますが、いっぽうアブラカダニエルはアイスキングにはまだいいところが残ってると思う、と最後まで信じようとします。最終的に葉っぱ男の意見が決め手となってアイスキングを残留させる方向で皆が納得し、アイスキングに対する作戦を考えます。

アブラカダニエルたちはアイスキングを拉致!アイスキングを縛り上げて最近の仲間たちへの冷たい態度を咎め、改心を迫りますが、アイスキングはお前たちなんて会ったことも無いと知らんぷりを徹します。

アブラカダニエルの言葉もロンジェームスの言葉もアイスキングには届かない中、口を持たない葉っぱ男のテレパシーがアイスキングの真心に触れます。

アイスキング「やれやれ、葉っぱ男、そんなふうに言われると...」

アイスキング「ワシは...嫌な奴だったんじゃな。それに、かわいいガンターのことを忘れるなんて...」

アイスキング「お前さん、言葉の使い方が上手いのう。わが親友よ」

説得が成功するかと思われたその時…アイスキングを取り返そうとダークムーンエスバッツのメンバーが突入してきます。

ジュゼッペとダークムーンエスバッツ、それぞれが自分たちと一緒に行こうとアイスキングにアピールを送りあいますが、結局は両者の間で戦闘が勃発!

ダークムーンエスバッツのメンバーの戦闘力は圧倒的で、奮戦もむなしく次々にやられていくジュゼッペの仲間たち…。

アイスキングはどちらのグループを選ぶのか決断を迫られます。

(ここで、悩ましい選択へのストレスで精神が異常を来たしたアイスキングが幻覚を見るシーンが入るんですが、この幻覚描写が、幼マーセリン・フィオナ・ケイク・リカルディオ・ベティ・エバーグリーン…とアイスキングと王冠の歴史にまつわるキャラクターたちが総出演で、ファンサービス的にかなりポイント高いシーンになってます)

アイスキング「ワシはいまとても幸せじゃ! ネプターがここにいたとしても…

ネプタ―「パパ!どういうこと?」

ともかくしばらくして幻影から目覚めたアイスキングは、アブラカダニエルの涙の説得も無視し、仲間を見捨てて結局ダークムーンエスバッツと共に行くことを選びます

アイスキングを正式にメンバーに加えたダークムーンエスバッツ。いよいよマーブルを倒すべく出発し、古地図の導きによりついにマーブルのアジトにたどり着きます。

そして、アジトに侵入した彼らを監視している怪しい人物がいるのでした…。

はたしてマーブルとの対決は?ガンターは無事なのか?アイスキングと仲間たちの友情のゆくえは?……と気になるところだと思いますが、あらすじはここまでで終わります。

 

 

個人的に本作は「まさしく、こんな話が見たかった」と思わせてもらえる内容で、非常に気に入りました。

ガンター誘拐の謎をめぐるミステリーも先が気になる展開で面白いのですが、物語のもうひとつのテーマはアイスキングと仲間たちの友情なんですね。

私はアニメ本編の「楽しいバス旅行」回が大好きなもので、本作はその続編的なストーリーとして、アイスキングと魔法使いの友人たちのその後の様子がしっかり描かれているのが嬉しかったです。まあ本作だとアブラカダニエルたちは、ほとんどアイスキングの薄情な態度に嫌な気持ちにさせられてばかりというかわいそうな扱いなんですけど(笑)、傷ついてるアブラカダニエルを命の魔法使いが面倒見良く慰めてたり、そんなメンバーの仲の良さも見ていて微笑ましいです。

また、アニメだと完全空気キャラだった葉っぱ男Leaf man)が、かなりの活躍を見せるのもいい!口が無いのでどうやらテレパシーで他の人と会話しているという設定になっている(※葉っぱ男が具体的に何を言ったのかは書かれない)のですが、紛糾する議論の場をうまくまとめたり、仲間を捨てたアイスキングを改心させるあと一歩のところまでいったり、寡黙な実力者という趣でいい味出してます。

アイスキングと魔法使いたちのストーリーの中心となっていますが、その一方でフィンとジェイク、バブルガムやマーセリンにランピーといった他のメインキャラがちゃんと顔を見せてくれるので、ファンサービス的にも隙がありません。

アイスキング・マーセリン・バブルガムの3人が仲良くショッピングモールにいくパートはほとんど脱線なんですけど、アイスキングの頼みごとなら手伝ってあげようというマーセリンの心意気もいいし、はじめは嫌そうだったバブルガムもアイスキングの服探しがだんだん楽しくなって、最後には「本当に楽しかったわ!」という感想を言っちゃったり、好きなくだりです。

また、「マーセリン&ランピー」で、ランピーとマーセリンに王国を荒らされまくったブレックファーストプリンセスが、本作でも例によってオープンカーをパクられたりクレカを不正利用されたりとマーセリンからひどい目に遭わされるものの(本当にひどい!)、最後には好き勝手やっていたマーセリンに殴りかかっていて、やられっぱなしではないのも好印象です(「マーセリン&ランピー」だとマーセリンとランピーにいたずらされ放題のまま終わりで、もやもやしていたので…)。

全体的に本作は「アニメでやってほしかったこと・見たかったこと」をうまく拾ってくれているという印象で、個人的に考えるアナザーストーリーの形として理想的な内容でした。

本作のオリジナルキャラであるダークムーンエスバッツの面々もキャラが立ってて良かったです。カッコつけてすかした不良たちではあるものの、やっぱり子供で未熟なところがあったり、ただの嫌な敵で終わらないどこか善良さがあるのはアドベンチャータイムらしいです。メンバーのなかで特に印象深いのはやっぱりアリステアでしょうか。闇の魔法の実力があって、とんがった不良っぽく振舞ってるんだけど、実はそんなに悪い性格じゃなくて、アイスキングを気にかけてくれる良い子だったりして、ちょっとマーセリンを思わせるとこもありますね。

アリステア

ストーリーももちろん面白かったのですが、負けず劣らず絵のほうもとっても魅力的です。Natalie Andrewson氏の絵は児童書にありそうな素朴な画風で、第一印象はちょっと味気ないかな?と感じていたのですが、キャラクターの描き方も可愛くてユーモラスなので読んでるうちにどんどん引き込まれていきました。

もうほんとうに、全編にわたってかわいいです。

マーセリンやバブルガムやアリステアみたいな女の子キャラはもちろん、アブラカダニエルやロンジェームスや葉っぱ男までかわいいんですよ。アニメのほうではそんな印象なかったんですけど、このコミックだと本当にまるく・かわいく描かれています。かわいいと言っても、あざとすぎる可愛さじゃなくて、すこしマヌケな雰囲気も含んだ笑える絵なのも好みでした。アドベンチャータイムのコミックは色んな人が絵を描いていますが、そのなかでも本作はかなり日本人に受け入れやすい絵じゃないでしょうか。

なんか他のキャラの話ばっかりしてきましたが、もちろん主人公アイスキングはいろんな意味で大活躍なので、アイスキングが好きな人にもしっかりおすすめですよ!

薄情で都合がいいことばっかり言って、すぐ騙されるまぬけで、寂しがりやで、それでいて強力な氷の魔法の使い手で……そういう嫌らしさ・愛らしさ・カッコよさをひっくるめたアイスキングの魅力が本作でも余すことなく描かれています。この記事のあらすじだとアイスキングにぜんぜん好感が持てないかもしれないんですけど(笑)、最後は読後感のいい結末になっているので、そのあたりはご安心ください。

 

というわけで多くの人に読まれてほしい内容になっているのですが、これ、いまからでも日本語翻訳版出さないですかねー??(無理か)。