ふるやの森

あまり他で扱われていない事柄、個人的に書き留めておきたい内容など

仲間たちと地下迷宮の謎に挑む、ゲーム化第二弾「Adventure Time: Explore the Dungeon Because I DON'T KNOW!」感想&攻略メモ

 

ゲームの感想

今回紹介するのは「Adventure Time: Explore the Dungeon Because I DON'T KNOW!」です。

以前紹介した「Adventure Time: Hey Ice King! Why'd You Steal Our Garbage?!!」に続くWayForward製作によるアドベンチャータイムのゲーム化第二弾です。

PS3Xbox360wii U3DSでそれぞれ発売されており、私がプレイしたのはPS3で、前作と同じく日本版は未発売です。

2013年に発売されたゲームなので、ちょうどアニメ本編がシーズン5を放送していた頃ということになります。「10年前のゲームを今更やってんのかよ!」とツッコまれるところですが、最近アドベンチャータイムのゲームにも興味が出てきまして、一通り遊んでみたい気持ちが出てきてるんですよね。本当に今更ではあるんですけど…。

物語の舞台はキャンディ王国。ある日、プリンセスバブルガムはフィンとジェイクを呼んで、ある問題の調査を依頼します。キャンディ王国には数多くの敵がおり、敵たちを捕まえては地下墓地の監獄に長年にわたって閉じ込めてきたのですが、最近になってその囚人たちが脱走しており、バブルガムにはその理由がわからないのでBECAUSE I DON‘T KNOW)、フィンたちにダンジョンに潜入して調べて欲しいというのでした。マーセリンとシナモンパンも仲間に加わって、広大なダンジョンの探索が開始されることに…というのがストーリーの導入部です。

このゲーム、事前に調べた評判があんまり良くなかったので、じつはそんなに期待していなかったんですが、でも実際に遊んでみた感想としては大いに気に入りました

まず、ゲーム全体を貫くレトロゲームっぽさにとても惹かれます。キャラクターやオブジェクトや文字フォントはもちろん、さらにイラストカットからムービーまでドット絵で描かれていて、いかにも往年のレトロゲームみたいな見た目になってるんですよ。新しいゲームなのに懐かしさ満点、このレトロ感がすごく良い味を出しています。

もともとアドベンチャータイム自体がレトロゲームのパロディが多い作品なので、こういうビジュアルを選んだのは正解というか、とても合っていると思います。本当に90年代前半くらいに発売されたゲームみたいに思えてきます。

マリオやカービィのような横スクロールだった前作「Hey Ice king~」とはまたジャンルが異なっていまして、ダンジョンクロウルって言うんでしょうか?視点は見下ろし型、ダンジョンは入るたびに作りが変わるようになっており、フロア毎にどこかにある階段を探しては、ひたすら奥深くへと潜っていくことを目指すタイプのゲームです。

ダンジョンには襲いかかってくる敵もいますが、武器や財宝も落ちています。探索しては戦利品を手に入れて地上へと持ち帰り、戦力を強化してはまたさらに奥深くを目指して進んでいくという、言ってしまえばやることはそれだけで、地上の拠点とダンジョンを行ったり来たりするだけのシンプルなゲームです。まあ確かにPS3時代としてはけっこう地味で単調なんですが、自分はこういうコツコツ進めるゲームは好みなので、キャラクターの強化とかアイテム収集とかなかなか楽しくプレイできました。

ダンジョンもひたすら潜っていくばかりではなくちゃんとストーリーも用意されており、10Fごとに節目のボス戦をクリアすればムービーが鑑賞できるようになっているので、「次の10Fまでがんばろう」と、プレイヤーのモチベーションを保てる仕組みにはなっていると思います。

ファンとしては、なんといってもたくさんのキャラクターを使えるのが嬉しい!ゲームの進行に応じてキャラが増えていき、最終的にはフィン、ジェイク、マーセリン、シナモンパン、ランピー、アイスキング、レモングラブ、フレイムプリンセスの計8人が使えるようになります。ランピーやアイスキングがレモングラブが、単にゲームに登場してるだけじゃなくて、プレイヤーキャラとして動かせちゃうんです。もうこれだけでも素晴らしいと思いますね。ちなみに、このゲームは複数人プレイに対応しており、最大4人のキャラが入り乱れる賑やかな遊び方もできるみたいです。

ドット絵で描かれたキャラクターはかわいくて愛着が持てます。フレイムプリンセスは「燃えろよ燃えろ」回のショートヘアバージョンで仕草がいちいちキュートだし、ジェイクはトテトテ歩いてる姿が愛らしく、ランピーは大口を開けて絶叫したりとアニメの印象そのままでお気に入り。

操作中もムービーでも、キャラクターがいっぱい喋ってくれるので、これは日本語吹き替え版の声優さんの声で聴いてみたかったですね。

キャラクターに持たせる武器(サブウェポン)もたくさん種類があって選べるのが良かったです。ランピーに大斧をぶんまわさせたり、アイスキングに火炎放射器を持たせたり、組み合わせのギャップも楽しめます。

ツリートランク初登場のときにジェイクが持っていた「Jake's Sword」や、ハグウルフと化したフィンを撃退するのにキャンディピープルが使った「Candy Cane Gun」、例のパイを投げつける「Neptr Arm」、さらには「イモムシキングふたたび」でフィンの夢の中に出てきた「Shark Sword」まであったり、アニメ由来かつマニアックな武器が登場してくるのはファンサービスとして楽しいところ!

アニメからの引用ではないオリジナルの武器も多いのですが、カニ(蟹。生き物のカニ)をそのまま投げつける投擲武器「Crabs」、撃つと鳴き声とともにネコの顔が飛んでいく「Kitten gun」、食パンを撃ちだす「Bread Shot」、9つの味が乗ったアイスクリームを鞭のように使う「Cone O'9 Flavors」など、アドベンチャータイムらしいシュールでポップなデザインなので違和感はありませんでした。

ちなみに、最も笑った武器は「Goblin Whip」で、まんまゴブリン一体を鞭として振り回して使う武器で、振るうたびにゴブリンが叫び声をあげるんですよ。あまりにひどすぎて笑いました。

ここまででわかる通り、本作は遊び心たっぷりで原作アニメをとても読み込んで作られています。原作アニメからの引用ネタが大量に盛り込まれていて、そのマニアックぶりがアドベンチャータイムのファンにはいちいち楽しいのですが、その小ネタの凝りようと面白さをいくつか紹介しましょう。

 

まず、ロード画面で毎回なにかの文章の一節が表示されるんですが、これよく見ると、

・「I WROTE BOOK」→「ランピーが書いた本」(「コブコブにメロメロ」回に登場)

・「DREAM JOURNAL OF A BORING MAN, V.12」→「退屈な男の夢日記 12巻」(「無敵のジェイクスーツ」回に登場)

・「BOOK OF ROYAL RULES」→「ゴブリン王国の規則書」(「ゴブリンの王様」回に登場)

など、アニメ本編の劇中本からの引用になってるんですね。

ミステリアスで一見さも重要そうな文章に見えますが、実際に書いてあることはぶっちゃけどうでもいい内容というギャップが笑いどころです。

他にも、ダンジョンの宝箱には時々お供キャラが入っていることがあるのですが、ある時出てきたのが「ニワトリ」で、くっついてきた瞬間画面がモノクロに変わり、さらに置いてあるアイテムを奪って逃げていくんですよ。なにこれ?と思ったらこれは「ビーモは名探偵」に登場した探偵ビーモの昔の女・ロレインなんですよね。本編の設定通りにお宝を見つけては逃げ去っていく単なるハズレキャラで、全然ありがたくないんですが、ファンからするとマニアック過ぎてちょっと笑える出演です。

さらには、おまけで「BMO GAMES」というミニゲーム集が用意されており、収録されているゲームも、「家の中で大冒険」回に登場した「お話パレード」の続編らしい「Conversation Parade2」、落ちてくるリンゴをキャッチしていく「SUPER BEST BROS」、アニメに時々登場する映画「恐怖の潜水艦」のゲーム版「Heat Signature THE GAME」など、なんともレトロでファンのハートをくすぐる内容となっています。まあ実際に遊んでみるとゲームとしての面白さはそれなりなんですけど(笑)、わざわざこういうおまけ要素を用意してくれる開発者の遊び心が素晴らしいなと思います。

小ネタの数々に加えて、さらにファンにとって重要なポイントは、前作に引き続いて原作者のペンドルトン・ウォード氏が参加しており、ストーリー面も力が入っていて本格的な出来になっていることでしょう。ムービーもしっかりボイス付きなので、もうほとんどアニメの番外編のような感覚で見ることができます。

はたしてダンジョンの最奥ではなにが待ち受けているのか、謎で引っ張る先の気になる作劇になっていて、没入してプレイできました。で、じつはこのゲームにはアニメ本編でははっきりしなかったある存在のその後が描かれています。私もプレイする前はそんなにストーリーにも期待していなかったので、これはちょっと驚きで、いい意味で予想を裏切られました。

詳細はこの記事の一番下に記述していますが、ネタバレが許容できて興味のある人は読んでみてください。

 

というわけで、たくさんのキャラを使うことができて、ファンサービス的な小ネタも満載で、本編とも関わってくる重要なストーリーという、アドベンチャータイムのファンにとってかなり魅力のあるゲームなのですが、不満な点もあります。

おそらく誰もが感じるであろう不満点は手に入れた財宝を貯金できないことでしょう。ダンジョンから持ち帰った財宝はキャラクターを強化したりアイテムを購入するために使うのですが、再びダンジョンに入る際に、使い切らなかった財宝はバブルガムから「candy tax(キャンディ税)」として全て徴収されます。つまり、「財宝150のうち125は耐久力を強化するのに支払ったから、残り25は使わずに取っておこう…」みたいなことが基本的にできないんです。これがなかなかに不便。たとえばキャラクターを強化するのに、最終的に財宝が500とか750とか大量に必要になってくるのですが、その目標額まで少しづつ貯金していくことはできないので、一回の探索で一気に750集めなければならないワケです。…とはいっても、深い階層だと財宝はたくさん発見できるので500や750集めるのは時間はかかるけどそこまで難しくはないし、さらに実は財宝を徴収されずにダンジョンに入れる「Mind Games」というアイテムも後半から手に入るので、探索を複数回に分けて財宝を集めることもできるようになります。でもこんな制限を課されるのに納得がいかないというか…「普通に貯金できる仕様でよくない?」と感じちゃうんですよね。まあコツコツ貯金できちゃうと低階層の時点でもキャラクターを最大まで強化することが可能になるので、それを阻止する難易度調整の一環かなと思うんですけど。

あと、ダンジョンの最初のほうは簡単なんですが、階層が深くに行くにつれ、どんどん嫌らしく厄介で難しくなっていきます

単純に敵の数がどんどん多くなるし、敵を産みだすジェネレーターもあちこちに置かれてるし、階段がロックされるようになってフロアのどこかにあるスイッチを押さないとロックが解除できないし、しかしスイッチや宝箱も罠だらけだし、敵は頑丈で簡単に倒せなくなるし、攻撃しようと思っても逃げたり隠れたり分裂したりしてイラつくし、一階につきフロアが3つも4つも増えて探索は大変になるし…ただでさえあまり変わり映えしないダンジョンを潜っていくだけの単調気味のゲームなのに、さらにここまでめんどくささが増してくると「もうプレイしてて楽しくない!」って感じてしまう人もいるでしょう。サクサク爽快に進めるタイプのゲームでもないので、しばらく遊んで楽しめなかった人はやっぱり最後まで楽しめないと思います。

そして、これはゲーム内容とは直接関係ない問題点なんですが、このゲーム、画面が停止し一切操作を受け付けなくなるフリーズの不具合が多いです。最初は自分のPS3がダメなのかと考えたのですが、調べて見るとやっぱりsteam版等でもフリーズ報告が多いみたいです。実をいうと1、2時間プレイしていると一回はフリーズする感覚で、次のフロアに移行する際のロードに負荷がかかっているのかもしれませんが、このせいでどうも安心してプレイできないんですよね。他の人はこんな頻繁にフリーズしないものなのか気になります…。

※自分で調べたり試してみたりして見つけたフリーズ回避のコツなのですが、「PSNをサインアウトしてプレイする」「ダンジョン内に落ちている財宝をなるべく拾わないようにする」のが効果的みたいです。フリーズする局面は圧倒的にフロアクリア時のロード画面である場合が多く、そのフロアで手に入れた財宝を集計する処理に負担がかかっていると思わしいんですね。なので財宝を一つも拾わないようにすれば、負担が減ってフリーズしにくくなるようです。実際、ナイトスフィアを一度に50階層突破する「The Limit」のトロフィーを獲得するために、上記を実践してプレイを試してみたところ、2時間あまりのプレイで一度もフリーズすることなく無事達成することができました。

 

WayForward社が製作したアドベンチャータイムのゲームは他にも「Hey Ice King! Why'd You Steal Our Garbage?!!」と「The Secret of the Nameless Kingdom(ネームレス王国の3人のプリンセス)」も遊んでいますが、個人的に本作「Explore the Dungeon Because I DON'T KNOW!」が一番お気に入りです

確かにめんどくささや単調さはあるのですが、アドベンチャータイムのキャラゲー・ファンアイテムという点において本作はすごく魅力のあるゲームになっているので、アドベンチャータイムのファンなら、とりあえず触ってみて損はないと思います。これがネームレス王国のような日本ローカライズ版が発売されなかったのはなんとも惜しいですね。

 

【小ネタ】フィンのスペシャルアタックの謎

上に書いた通り、このゲームはアニメ本編のマニアックなネタがたくさん仕込まれていて、その中でも特に印象に残ったネタを紹介します。

本作には各キャラクターに「スペシャルアタック」、つまり必殺技がそれぞれ用意されているのですが、主人公フィンの一つ目のスペシャルアタックの演出は「変なキャラとエレベーターに乗っているフィン」という非常に不可解なもの…。

初めて見たとき、「これ一体なんなんだろう?」とあっけにとられました。

もしかしてザギオック?でもなにか違うような…。

…で、2か月くらい経ってから、たまたま本編の「ミステリーパーティー」回を見返していてようやくわかりました。

「ミステリーパーティー」では、フィンが「本物のジェイクしか答えられない質問」をするシーンがあって、「僕が何度も見てるエレベーターの夢でいつも僕のそばにいるのは誰?」と聞くとジェイクは「バケモノまじない師」と答えるのですが、オリジナルだとこれは「ハーフオークのシャーマン」と言っていて、これが元ネタだったんですね!

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

こんな本編でも一回しか言及されていないようなネタを必殺技にするなんて、やっぱこのゲームってすごいマニアックだな!!!と改めて感心しましたよ。

3DS版について

2024年3月、3DSを入手したので、PS3版と比較して気付いたことを書いておきます。

・グラフィックが違う!

PS3版が滑らかなトゥーンレンダリングでアニメ版アドベンチャータイムのルックを違和感なく再現しているのに対して、3DS版はあちこち3DCG感丸出しの質感になっています。ジャギーも目立っていて、はっきり言うと安っぽい…。

3DS版のグラフィックが異なるのは、おそらく立体視に対応させるためだと思われますが、PS3版と比べると違和感があって残念でした。

上:PS3
下:3DS

上:PS3
下:3DS

・ボイスが「ワワワワ~」になってる!

3DS版では、ムービーおよびキャラ操作中はちゃんと喋ってくれますが、それ以外の会話シーンではなんとボイスが意味ある単語ではなく「ワワワワ~」という喋りが流れます。

これ、アニメ版の「小さな恋の行方」の生き人形の喋りのパロディですね。

 

ミニゲームが削除されている

EXTRAから、「BMO GAMES」の項目が無くなっており、「HEAT SIGNATURE」「SUPER BEST BROS」等のミニゲームで遊ぶことができなくなっています。それに応じて、ナイトスフィアの宝箱からゲームのカートリッジが出現しません。

ちなみに、バブルガムのクエスト「FOREIGN POLICY」をクリアすると、報酬として「CONVERSATION PARADE 2」を入手したというメッセージがなぜか表示されるんですが、直後に「String ID is not」という怪しい表示が出る(これメッセージ設定のミスっぽい?)だけで、やっぱり実際に遊ぶことはできません。

 

マルチプレイ機能なし

3DS版は同じソフトを持っている人とワイヤレス通信で協力プレイ」みたいな機能があってもよさそうなんですけど…無いです。

 

・下画面でビーモが喋る

削除されている要素ばかりじゃなくて、3DS版ならではポイントもあります。

3DS版は下画面にビーモの顔が表示されており、このビーモはナビゲーターとして、ゲームの進行をボイス付きで解説してくれたりするんですね!

トラップを踏んだら「トラップだ」と言ってくれたり、アイテムを入手するとその解説を喋ってくれるんです。このためにビーモの声を新録してるということでしょうから、これはなかなか凝ってますよね。

ちなみに、ダンジョンのミニマップを見たい場合は、下画面をタッチすると上画面に数秒表示されます(っていうか、空いてる下画面にミニマップを常時表示できるようにしたらよかったんじゃ!??って思うところではありますが…)。

 

 

というわけで、3DS版固有の要素は、ビーモのおしゃべりと立体視だけなので、これらに特別魅力を感じない場合は、PS3版等据え置き機でプレイしたほうが良いでしょう。

ただ、一応もうひとつ長所があって、3DS版はメディアがカートリッジのためかフリーズしにくいです

PS3版でフリーズに泣かされまくった身としては、これは嬉しかったですね(っていうかフリーズしないのが商品として普通なんだけど…)。

 

基本的なこと & 知っておくと便利なこと

<ボタン操作>

・□ボタン…通常攻撃。長押しするとチャージ状態になり、強攻撃が放てる。

・△ボタン…サブウェポンで攻撃。

・〇ボタン…スペシャルアタックを発動。

・×ボタン…落ちているアイテムを拾う。

・Rボタン…ブロック(防御)状態になり受けるダメージを軽減できる。また、敵が攻撃してくる瞬間にタイミングよくRボタンを押すと、攻撃を無効化(パーフェクトブロック)できる。

・Rボタン+移動…緊急回避。高速でその場を離れる。

・セレクトボタン…マップを確認する。

 

サブウェポンは1つだけ持ち歩ける。新しいサブウェポンを拾うと、それまで持っていたほうは地面に置かれる。

 

・遠隔攻撃系のサブウェポンには使用回数があり、回数0になると使えなくなる。使用回数を回復するにはダンジョン内で「Ammo」を手に入れるか、または地上へ帰還すると使用回数は自動的に最大まで回復する。

 

・通常攻撃で敵にダメージを与えると、イマジネーションメーターが少しづつ溜まっていく(※サブウェポンによる攻撃ではメーターは溜まらない)。イマジネーションメーターが満タンの状態で〇ボタンを押すとそのキャラクターのスペシャルアタックが使用できる。使用できるスペシャルアタックは各キャラ初期状態では1種類だけだが、ネプタ―に財宝を支払うことで、最大3種類まで拡張してくれる。

 

地上にいるキャラクター達は、ダンジョン探索中に獲得した財宝(treasure)を支払うことで各能力を強化してくれる。

スターカップケーキ…いわゆるダメージへの耐久力・HPを示す「Thump(ハートのドキドキ♡)」を成長させてくれる。

マッスルプリンセス…通常攻撃の威力である「Rowdiness(乱暴さ)」を成長させてくれる。

レディレイニコーン…チャージ攻撃が発動できる速度「Focus(集中力)」を成長させてくれる。

ネプター…イマジネーションメーターの数を拡張し、使えるスペシャルアタックの種類を増やしてくれる。

 

・バブルガムに話しかけると、ダンジョン探索が始められる。5Fごとにチェックポイントとして記録され、次回探索する際には通過したチェックポイントからのショートカットが可能になる(例:20Fまでクリアしたことがあれば、6F・11F・21Fからスタートできる)。

 

・10Fごとにボスとの対決が待ち構えている。一度ボスを倒したフロアは、再び訪れた際には普通のフロアとなっており、ボスとの再戦は起こらない(※ただし、20Fの囚人から逃げるイベントは何回でも発生する様子)。

 

・一の位が5のフロア(5F、15F、25F…)をクリアする度に、拠点に帰還するかどうかを選ぶことができる。ただし、ここで帰還を選ばなくても、10の倍数のフロア(10F、20F、30F…)をクリアすると強制的に拠点に帰還させられる。

 

・持ち帰った財宝(treasure)は、再びダンジョンに入る際に「キャンディ税(candy tax)」としてバブルガムによって全て徴収されてしまう。ただし、「Mind game」のトークンを装備してダンジョンに入れば、徴収されずに持ち込むことができる。

 

・ダンジョン探索中にハートが0になって力尽きると、サブウェポンを失い、財宝が半分に減った状態で地上に帰還させられる(※ただしカギは失われない)。また、ダンジョン探索中に獲得したトークンも、途中で力尽きてしまうと結局失われてしまい、入手したことにならない。

 

・ダンジョンに入る際に、キャラクターに特殊能力を付加するさまざまな「トークン(token)」を装備することができる。トークンは消耗品で一度使うと無くなってしまうので、便利なものは使い所を考えて残しておくと良い。

 

・ダンジョンの1つのフロアにずっと留まっていると、「Death(死の国の王)」が現れる。キャラを自分のほうに牽引しては、高ダメージの骨を投げつけてくる強敵だが、何度も攻撃を当て続けていれば倒すことは可能

 

・ダンジョン探索中に何回も力尽きていると、バブルガムが「Hey, don't feel bad--we all have bad days.would you like something to make this a little easier?(ねえ、気を落とさないで。誰にも悪い日はあるものよ。少し簡単にするために何か欲しいものはあるかしら?)」と聞いてくるが、これを了承すると、イージーモードになる。イージーモード状態では、キャラクターのトークンが「Heart Sweater」2個で固定され、ライフが一つ増加・食品アイテムでの回復量2倍・ハグウルフの呪いなどが無効になる効果が得られる。こうして書くとなかなか便利そうだが、このトークンスロットを2つ占有するHeart Sweaterは任意で解除することができない。3つトークンの装備スロットがあるフィンを除いて、他のキャラクターは別のトークンを選ぶことが不可能になってしまうので、かえって不便になる場合がある。イージーモードはキャラが力尽きても操作キャラを変更してもずっと継続されるが、次のボスを倒すことでイージーモード終了となり、「Heart Sweater」のトークンが消える。

 

・70Fをクリアすると、地上の左上、ガチョウ店長の店の隣に、おまけダンジョン「ナイトスフィア」の入り口が現れる。ナイトスフィアは強制帰還がなくずっと探索し続けることが可能なダンジョンで、中にいる敵は強くて数も多く、攻略難度は高い。5Fごとにボスバトルが発生するが、これは本編に登場したボスの強化版との再戦となる。

 

・ナイトスフィア内の宝箱にはゲームのカートリッジが入っていることがある。ナイトスフィアで手に入るゲームは「ADVENTURE MASTER DUO」「HEAT SIGNATURE」「SUPER BEST BROS」の3つで、入手後はタイトル画面の「EXTRA」の「BMO GAMES」から遊ぶことができる。

カートリッジの出現率は高めで、1Fの時点でもう3つ手に入ることすらある

 

・80Fを超えるあたりから、イジメか?ってレベルでダンジョンのトラップの嫌らしさや、敵キャラの凶悪さと頭数の多さが目立ってくるので、なかなか先へ進めない!…とつまずいてしまう人もいるかもしれない。楽に突破できるおすすめの構成は、マーセリンを選んでサブウェポンに「Big Axe」を持たせ、トークンには移動速度を上げる「Speedy Feet」とダメージ半減の「Zeldron's Armor」を装備させること。強化されたマーセリンの俊足によって広大なフロアを駆けまわり、効率よく階段を探すことができる。たくさんの敵に襲われても俊足とダメージ半減によって逃げ切り、どうしても倒さないといけない敵はBig Axeで高速排除できる。

 

・ハグウルフにハグされると、キャラクターにハグウルフの呪いがかかる(小さいハートマークが現れるようになる)が、これはマルチプレイ時に味方キャラをハグするようになる効果で、ソロでプレイしている場合では特に意味はないらしい。

 

・サブウェポン「BREAD SHOT」と、トークンの「HERO KERCHIEF」は、初めて出現するのがガチョウ店長のショップで、ショップに並んでいるのを購入すると、ダンジョンでも入手できるようになるようだ。

 

トークン一覧>

SPEEDY FEET…移動速度が速くなる 
NERDICON GLASSES…強攻撃発動までのチャージ時間が短くなる
ENCHIRIDION…イマジネーションメーターが溜まるのが早くなる
NIGHTOSPHERE AMULET…マーセリンのイマジネーションメーターが溜まるのが早くなる
WISHING EYE…通常攻撃の威力が上がる
WISH ORB…サブウェポンの威力が上がる
HERO KERCHIEF…遠隔攻撃の使用回数が無限になる
FRIDJITSU MANUAL…通常攻撃に凍結効果が付加される
QUESTIONABLE POTION…通常攻撃に毒の効果が付加される
CANDY SEEDS…食品アイテムの回復効果が二倍になる
THUMP TOKEN…THUMP(耐久力)の最大値が1つ増える

ZELDRON'S ARMOR…受けるダメージが半減する
BROGEND MEDALLION…シカの激突などによるノックバックが無効になる
NINJA SYMBOL…無敵状態の継続時間が長くなる
TURTLE PRINCESS MEDAL…ブロック時にダメージを無効にする(※発射物は無効化できない)
FORCE FIELD…全方向からの攻撃をブロックできるようになる
MIRROR OF ORORRIM…パーフェクトブロック時に発射物を跳ね返せるようになる
PASSIVE RESISTANCE…緊急回避時に敵にぶつかってダメージを与えられるようになる
WIZARD EYE…どのスイッチがトラップが識別できるようになる
TINY WINGS…溝・ぬかるみ・氷床などの地形を無視して移動できるようになる
CLOUD UNDIES…浮遊キャラが空中(溝の上とか)でダメージを受けたときに落下するのを防ぐ
ERASER…電撃バリアに接触してもダメージを受けなくなる
BUBBLE SOAP…ぬかるみやガム壁に接触しても移動が遅くならない
BOOTIES…氷床で滑らなくなる
INSTANT BATH SERUM…毒状態が無効になる
UNIVERSAL TRANSLATOR…混乱状態が無効になる
HUGSBANE…ハグウルフの呪いが無効になる
HAMBO…(効果不明。「ENFEEBLE CURSE[弱体化の呪い]」を防ぐらしい?)

GLUE…(効果不明。DISARM CURSE[武装解除の呪い]を防ぐらしい?)  

UN-FREEZING POTION…凍結状態が無効になる
FLAME SHIELD…地面の炎でダメージを受けなくなる
METAL DETECTOR…敵が財宝を落とす確率が上がる
ROYAL MEDAL…トラップではない宝箱の数を増やす
MIND GAMES…使わなかった財宝をダンジョンに持ち越せる
BAG OF KEEPING…ダンジョンで倒れてもサブウェポンを失わなくなる
LOLLIPOPS…チェックポイント以外のフロアでも地上への帰還を選べるようになる
ALMIGHTY KEY…カギの使用個数が無限になる
OBNOXYGEN…ジェネレーターからモンスターが出現する頻度が遅くなる
SACK LUNCH…フロアをクリアするたびにHPが回復するようになる
HEART SWEATER…耐久力が1つ増える&食品アイテムの回復効果が二倍になる&ハグウルフの呪い等が無効になる

 

<プレイヤーキャラクター>

※能力値の「★」は初期の数、「☆」は後で拡張できる数を表します

 

・フィン

THUMPS(耐久力):★★★+☆☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★+☆☆

IMAGINATION(必殺技)★+☆☆

通常攻撃:近接(剣で攻撃)

チャージアタック:前方へ飛び蹴り

スペシャルアタック:①敵全体にダメージ ②敵を回復アイテムに変える ③敵全体にダメージ(強)

特徴トークンを3つ装備可能

 

特殊能力を何も持たないが、トークンを3つ装備できる唯一のキャラクターであるため、トークンさえ揃っていれば使い勝手はかなり良い。

耐久力がシナモンパンと並び最大で、さらに二番目のスペシャルアタックで回復アイテムを生成できるので生存力も優秀。

 

・ジェイク

THUMPS(耐久力):★★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★+☆☆

通常攻撃:近接(体を武器に変形させて攻撃)

チャージアタック:回転して周囲の敵を弾き飛ばす

スペシャルアタック:①サブウェポン出現 ②状態異常を治療 ③HPを全回復

特徴:溝や水路を飛びこえることができる

 

溝や水路を飛び越えられる・チャージアタックで敵を弾き飛す・スペシャルアタックでサブウェポン出現、と「地味に便利」な能力が集まった性能。これといった欠点はなく使えるが、やっぱり地味な印象を受ける。

(個人的意見だが、手を伸ばせることで通常攻撃のリーチが他のキャラより長いとか、そういうジェイクらしさを活かした特徴がもっとあっても良かった気がする)。

 

・マーセリン

THUMPS(耐久力):★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★★★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★+☆☆

通常攻撃:近接(アックスベースで攻撃)

チャージアタック:前方の敵を麻痺させる

スペシャルアタック:①敵全体にダメージ(小) ②敵全体にダメージ(中) ③敵全体にダメージ(大)

特徴:溝・水路・氷床などを無視して移動できる、ブロック状態のとき敵の発射物を吸収してイマジネーションメーターを上昇させる

 

とにかく優秀なキャラ。浮遊状態により溝や氷床を無視できるため移動が快適で、さらに他の浮遊キャラであるアイスキングやランピーと比べて移動速度も速い。触手や妖精が飛ばしてくる発射物を吸収してイマジネーションメーターを溜められる特性もあるので、防御面でも他のキャラと比べて一段上の性能を誇る。最初から最後までずっとマーセリンでいいくらい。

欠点としては、通常攻撃力が他のキャラと比べて低めなことだが、サブウェポンなら威力は通常攻撃力と別計算なので、Big Axeなど強力なサブウェポンを持たせることでカバーできる。スペシャルアタックはひたすら攻撃に特化した性能となっている。

 

・シナモンパン

THUMPS(耐久力):★★★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★★★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★+☆☆

通常攻撃:近接(両手で殴る)

チャージアタック:排泄物で正面の敵を攻撃

スペシャルアタック:①回復アイテム出現 ②無敵状態(短) ③無敵状態(長)

特徴:ガード状態で移動(緊急回避)すると敵をはじき飛ばせる

 

耐久力の初期値が高く、伸びしろはフィンと並んで最大。さらにスペシャルアタックは回復アイテム出現に無敵化と、とにかくダンジョンで生存することに特化した性能。それでいて通常攻撃力も高い。欠点として、移動性能は低い。移動速度も遅く浮遊状態でもないため、Speedy feetのトークンでカバーしたい。

 

・ランピー(10Fクリア後)

THUMPS(耐久力):★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★★+☆☆

通常攻撃:遠隔(コブコブを投げる)

チャージアタック:八方向にコブコブ発射

スペシャルアタック:①敵全体を停止 ②状態異常を治療 ③敵全体にダメージ ④敵全体を財宝に変える

特徴:溝・水路・氷床などを無視して移動できる、スペシャルアタックの数が4つ

 

通常攻撃が遠隔であり、浮遊移動で地面のトラップを無視できるのはいいが、通常攻撃の威力自体は弱く、移動速度は遅い。Speedy feetのトークンと、サブウェポンに強力な近接武器を持たせてカバーしたい。スペシャルアタックを4つ持っている唯一のキャラで、4番目のスペシャルアタックは敵全体を強制的に財宝に変えてしまう効果で、まさに最終兵器!

 

アイスキング(30Fクリア後)

THUMPS(耐久力):★★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★+☆☆

通常攻撃:遠隔(氷柱を発射)

チャージアタック:氷柱で大ダメージ(近くの敵を自動的に狙う効果付き)

スペシャルアタック:①敵全体を凍結 ②無敵 ③敵全体にダメージ 

特徴:溝・水路・氷床などを無視して移動できる、氷柱攻撃で相手を凍結させる

 

移動速度が遅いことを除けば、屈指の強キャラ。浮遊移動で地面のトラップを無視できるし、通常攻撃は氷柱の遠隔攻撃で敵を凍結させる効果まである。ランピーと同じく、Speedy feetのトークンと近接武器を持たせて弱点をカバーしたい。

 

・レモングラブ(70Fクリア後)

THUMPS(耐久力):★★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★★★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★+☆☆

通常攻撃:近接(音波剣で攻撃)

チャージアタック:音波を飛ばして遠隔攻撃

スペシャルアタック:①味方全体を小回復 ②無敵化 ③敵全体にダメージ 

特徴:通常攻撃が必ずノックバック、ブロック時に発射物を無効化

 

通常攻撃に必ずノックバックの効果があるため、敵を壁際に追い詰めれば一方的に叩き続けられるが、それ以外の空間だと吹っ飛んだ敵をいちいち追いかけないといけないのでかえって倒すのに手間取ったりと一長一短。通常攻撃もチャージすれば遠隔に変化し、スペシャルアタックも回復・無敵・敵全体ダメージと一通りそろっていて、多芸なのが特徴。ブロック時に発射物を無効化できるが、前方から飛んでくる発射物だけなので注意。

 

・フレイムプリンセス(80Fクリア後)

THUMPS(耐久力):★★+☆☆☆

ROWDINESS(通常攻撃力)★★★+☆☆☆

FOCUS(チャージ速度)★★+☆☆

IMAGINATION(スペシャルアタックの数)★+☆☆

通常攻撃:遠隔(火球を投げる)

チャージアタック:ビーム状に火炎放射

スペシャルアタック:①敵全体にダメージ(小) ②敵全体にダメージ(中) ③敵全体にダメージ(強)

特徴:火の床トラップを無効化、トークンを1つしか装備できない

 

通常攻撃が遠隔で、威力も高い。血気盛んなフレイムプリンセスらしく、スペシャルアタックもひたすら攻撃に特化している。また、火の床トラップが無効(フランボを連れているのと同じ)なのは地味に便利。

しかし、トークンを1つしか装備できないのがとにかくネック。「Speedy Feet」+「Zeldron's Armor」の組み合わせが不可能なのは痛い。使用可能になるタイミングも最も遅く、少々不遇な印象を受ける。

 

DLCでガンターやペパーミントバトラーも使えたらしいですが、私がプレイした時にはもう配信終了していたらしく詳しいことはわかりません…。

 

<消費アイテム一覧>

ダンジョンに落ちている食品以外の消費アイテム。わかるのは名前だけで効能が説明されないので、以下に解説する。

KEY(鍵)…ロックされている壁・階段を開けて先に進める

STOP WATCH(ストップウォッチ)…一定時間、敵の動きを停止させる。

LAMB RELIC(子羊の遺物)…一定時間、無敵状態になる。

FAIRY(妖精)…イマジネーションメーターを1つ満タンにする。

AMMO(弾薬)…サブウェポンの使用回数を回復する。いくつ回復するかはランダム。

CYCLOPS TEARSサイクロップスの涙)…呪いや混乱などの状態異常を治療する。

MOLASSES糖蜜)…一定時間、透明になって敵から認識されなくなる。

DEMON'S HEART(悪魔の心臓)…一定時間、通常攻撃の威力がアップする。

HONEY ENERGY DRINK(はちみつ栄養ドリンク)…一定時間、移動速度が速くなる。

 

<ファミリア(familiar)一覧>

ダンジョン探索中、宝箱からファミリア(familiar)が現れて、一定時間キャラクターについてくるようになる。連れ歩くことによる効能が説明されずわかりにくいと思うので、下記に解説。

スタンレー…野菜ピープルのスイカ。飛んでくる弾や鹿の追突を無効化してくれる。

フランボ…火の精霊。火の噴出している床の上を移動してもダメージを受けなくなる。

ビーモ…おなじみゲーム機型ロボット。連れ歩いていると、HP回復アイテムである食品を落としてくれる。

ピエロナース…顔だけ登場。弾を飛ばして敵を攻撃してくれる。

ホットドッグナイト…ホットドック王国の騎士。近寄ってきた敵を攻撃してくれる。

シェルビー…おなじみのミミズ。宝箱に罠が仕掛けてあるかどうか示してくれる。

ダンス虫…踊るハサミ虫。しばらく何もせず待っているとダンスを踊り出し、HPを回復してくれる。

小さいマンティコア…翼の生えた人面ライオン。状態異常にかかると、治療してくれて去っていく。

おなら…黄色い炎みたいな見た目の気体。近づいてきた際にこっちがダメージを受けるハズレキャラ。

ロレイン…「ビーモは名探偵」に出てきたニワトリ。連れ歩いている間は画面がモノクロになり、アイテムやお金を見つけると盗んで去っていくハズレキャラ

 

<サブクエスト>

・バブルガム・ツリートランク、ブタ、スーザン、スターチーからはクエストを受注できる。クエストの依頼内容は、指定のアイテムを持ち帰る、特定の敵を倒すといった条件がほとんどで、依頼を達成してから報告すると、報酬としてアイテムや財宝をもらえる。メニュー画面の「QUEST」から現在受注しているクエストを確認できる。

条件を達成してクリア状態のクエストには、チェックマークが付く

・プリンセスバブルガムのクエス
WORTH YOUR WHILE    
(クリア条件)財宝を10集める
(クリア報酬)財宝10

WISE INVESTMENT      
(クリア条件)サブウェポンをトランクに入れる
(クリア報酬)サブウェポン「CONE O'9 FLAVORS」

SUPPORT THE LOCAL ECONOMY 
(発生条件)10Fクリア後
(クリア条件)ガチョウ店長の店で、なんでもいいので買い物する
(クリア報酬)「KEY」2個

STOP THE PRISON BREAK    
(クリア条件)20Fをクリアする
(クリア報酬)「SPEEDY FEET」のトーク

LOCATE THE ICE KING    
(クリア条件)30Fをクリアする
(クリア報酬)財宝25

PROTECT THE HYOOMANS!    
(クリア条件)50Fをクリアする
(クリア報酬)「CANDY SEEDS」のトーク

PSYCHIC DISTURBANCE    
(クリア条件)60Fをクリアする
(クリア報酬)財宝50

FORGET ABOUT THE DUNGEON        
(発生条件)70Fクリア後
(クリア条件)ナイトスフィアに入る
(クリア報酬)「LOLLIPOPS」のトーク

FOREIGN POLICY     
(発生条件)100Fクリア後
(クリア条件)マジックマンを倒す
(クリア報酬)「CONVERSATION PARADE 2」のゲームカートリッジ


ツリートランクのクエス(20Fクリア後から)
HUG IN WOLF'S CLOTHING 
(クリア条件)ハグウルフを5体倒す
(クリア報酬)「BOOTIES」のトーク

DELICIOUS PIE        
(クリア条件)ダンジョンの宝箱から「CRYSTAL APPLE(クリスタルリンゴ)」を手に入れる
(クリア報酬)ダンジョンに回復アイテム「DELICIOUS PIE」が出現するようになる

※「CRYSTAL APPLE」はおそらくダンジョン内のどこの階層の宝箱でも出現する

DANGEROUS DAGGER    
(クリア条件)「CURSED SWORD」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「FLAME CHUCKS」

※「CURSED SWORD」は40F以降に出現する

FIND MR. PIG    
(クリア条件)60Fをクリアする
(クリア報酬)「THUMPS」の成長1回無料

BAKED GOODS        
(クリア条件)「BREAD SHOT」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「CROISSANT WAVE」

※「BREAD SHOT」が初めて出現するのはガチョウ店長のショップで、ショップ登場後にダンジョンでも入手できるようになるようだ

 

・スーザンのクエス(50Fクリア後から)
HAT TRICK        
(クリア条件)「KITTEN GUN」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「CATLING GUN」

NOSTALGIA        
(クリア条件)ダンジョンの宝箱から「MARSHMELLOW(マシュマロ)」を手に入れる
(クリア報酬)「ROWDINESS」の成長1回無料

※「MARSHMELLOW」はおそらくダンジョン内のどこの階層の宝箱でも出現する

BEAUTIFICATION    
(クリア条件)ラブグラブを10体倒す
(クリア報酬)「METAL DETECTOR」のトーク

※一回の潜入で10体倒す必要がある。10体倒さずに離脱したら1からやり直し。

FIND SWEET LITTLE MAN    
(クリア条件)90Fをクリアする
(クリア報酬)財宝100

WEAPON UPGRADE        
(クリア条件)「BAMBOO POLE」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「SHARK SWORD」

※以降「SHARK SWORD」がガチョウ店長のショップに出現するようになる


・ブタさんのクエス(60Fクリア後から)
SCRAMBLED EGGS        
(クリア条件)「OVER EASY」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「EGG DROP

FEARTASTIC JOURNEY    
(クリア条件)70Fをクリアする
(クリア報酬)「IMAGINATION」の成長1回無料

TYPECASTING   
(クリア条件)「MAGIC WAND」
(クリア報酬)「CHERRY BLOSSOM WAND」
※Magic Wandはブタ系の敵が時々落とす

SWEET SILENCE        
(クリア条件)鳥系の敵を50体倒す
(クリア報酬)「ALMIGHTY KEY」のトーク

※一回の潜入で50体倒す必要がある。50体倒さずに離脱したら1からやり直し。

STRATEGY GUIDE        
(クリア条件)トークン「MIND GAMES」を手に入れる
(クリア報酬)財宝200
※「MIND GAMES」はマジックマンを倒すと時々手に入る

 

・スターチーのクエス(90Fクリア後から)

WASTE RETRIEVAL 
(クリア条件)ダンジョンの宝箱から「BROOM(ほうき)」を手に入れる
(クリア報酬)「FOCUS」の成長1回無料

※「BROOM」はおそらくダンジョン内のどこの階層の宝箱でも出現する

FINE DINING        
(クリア条件)「CRABS」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「SCORPIONS

※以降「SCORPIONS」がガチョウ店長のショップに出現するようになる

FUZZY FAVOR        
(クリア条件)「KITTEN GUN」を装備して話しかける
(クリア報酬)サブウェポン「CATURDAY CANNON」

※以降「CATURDAY CANNON」がガチョウ店長のショップに出現するようになる

TAKE OUT THE TRASH    
(クリア条件)ナイトスフィアにあるジェネレーターを50個破壊する
(クリア報酬)「NIGHTOSPHERE AMULET」のトーク
※一回の潜入で50個破壊する必要がある。50個壊さずに離脱したら1からやり直し。

THE IMPOSSIBLE DREAM
(クリア条件)死の国の王(DEATH)を倒す
(クリア報酬)「HEART SWEATER」のトーク

死の国の王は、ひとつのフロアに長時間とどまっていると出現する。近寄ると大ダメージを受けるので、倒すには遠隔攻撃がないとキツイ。

 

<ボス攻略>

・10F「デーモンキャット

一番最初のボスということもあり、あまり強くない。ビームや弾を発射してくるのを避けつつ、相手の側面に近づいて少し攻撃→離れる…のヒット&アウェイを繰り返せばダメージを受けずにあっさり倒せることも。正面から近づくと舌攻撃を喰らうので、側面から狙ったほうが良い。「KITTEN GUN」など遠隔攻撃のサブウェポンがあればより安全に戦える。

 

・20F「押し寄せる脱獄集団

画面左側から脱獄者の大集団が押し寄せてくる。集団に追いつかれると問答無用で失敗となるので、追いつかれないよう、ひたすら右へ右へと逃げる。道中に財宝が落ちているが、拾っているうちに追いつかれる恐れがあるので、慣れないうちは無視して逃げるのに専念したほうがよい。

途中、バリアが張られていて通りぬけられない箇所があるが、直前にある床のスイッチを押すとバリアが消えて先へ進めるようになる。しばらく走っていくとやがて崖があるので、橋を渡ってむこうの崖までたどり着けばゴールとなる。

 

・30F「アイスキング&フィオナとケイクの氷像

アイスキングとケイクの氷像は倒すことができず、フィオナの氷像を倒すと勝利となる。しかし、いきなりフィオナを攻撃しても、手痛い反撃が返ってきてしまう。

そこで、ケイクのほうを攻撃し続けるとやがてケイクがダウンしてうずくまり、それをフィオナが助けにやってきて回復させるので、ケイクを治療中の無防備になっている時のフィオナを狙って攻撃すること。これを何回か繰り返せば倒せる。

アイスキングは倒すことができないが、攻撃する度に回復アイテムであるアイスクリームを落とすので(最大5個まで)、回復に利用するといい。

 

・40F「ガンターのネコ

氷のフロアに、ガンターの産んだネコがいて、その周りをペンギンたちが歩き回っている。ネコを攻撃しようと近づくと電撃が喰らい、遠隔攻撃をぶつけると弾をバラまかれて反撃されるので、ネコを倒そうとしてはダメ

周りにいるペンギンを殴ると、殴られたペンギンは床の上を滑ってあちこちにぶつかり出すのを利用して、ネコに命中するのを待つ。滑ったペンギンと接触すると、ネコはペンギンで遊びだすので、これを何回か(3~5回?)繰り返せばクリアとなる。ただし、滑っているペンギンに当たるとこちらもダメージを受けるし、ネコのほうも攻撃してくるので、やられないよう注意すること。

 

・50F「フィッシュピープル救助

スーザンから、仲間であるフィッシュピープルたちを救出して下のフェンスの中にある安全地帯へと連れてくるよう頼まれる。

フィッシュピープルは黒い靄に包まれた集団に混ざってしまっており、見た目ではどれがフィッシュピープルなのかわからない。靄に近づいて「TICKLE(くすぐる)」を選ぶと靄が晴れて正体を見極めることができ、フィッシュピープルだった場合は問題なくこちらについてきてくれるが、モンスターだった場合はこちらが必ずダメージを受けてしまうため、しらみつぶしに靄に「TICKLE」を仕掛けるわけにはいかない。

見極め方として、黒い靄に近づいたとき、ウーザーは「ウガ~ウワウワ~…」とうめき声をあげるが、フィッシュピープルの場合、女性は「ンフ?」、男性は「ホワ?」みたいな短い声を出すので、これで近くにフィッシュピープルがいると判断できる。しかし近くにいることまでわかっても、集団で固まっている状況でどれがフィッシュピープルなのか見極めるのはシビアで、「これはフィッシュピープルだろう」と判断しても、ハズれる場合が多い。周りに他の靄がいない状態で、何度も近づいて声を聞いて、間違いなくこれはフィッシュピープルだと確信が持てない限りは「TICKLE」を選ばないように。

また、フィッシュピープルを連れ歩いていると、周りにいるモンスターたちがどんどん襲いかかってくるので、安全地帯にたどり着くまでも気が抜けない。通路の角をうまく使って慎重にモンスターを倒していくこと。

なお、フロア右上にある壊れた車を作動させると、ランプが光り出して周囲一帯の靄を一気に晴らすことができるが、当然、正体を現したモンスターたちが一斉にこちらに向かってくるのであまりおすすめしない。

3人全員を安全地帯まで連れてくると、残ったモンスター全部が襲い掛かってくるので、これを全滅させるとクリア。

 

・60F「ゴリアドVSストーモ

ゴリアドとストーモが壮絶な戦いを繰り広げており、2体から放たれる攻撃をかいくぐって、とにかくこの場を120秒間生き残るとクリアとなる。とにかく攻撃が当たらないよう逃げ回っていればいいので、簡単なほうだと思われる。時々ラブグラブやハグウルフが乱入してくるので、入ってきたら速攻で倒すように。赤い発射物を吸収できるマーセリンで挑むのがやはり楽。

 

・70F「レモングラブ

ステージ中央にレモングラブ(黒)がいて、レモングラブ(白)のほうはこちらを追尾して攻撃をしかけてくる。左上から小さいレモンピープルたちが無限に湧き続けており、当たるとダメージなので近寄ってきたら倒すこと。

レモングラブ(黒)は攻撃しても反撃されるので、そっちは無視してレモングラブ(白)のほうを攻撃する。何回か攻撃するとレモングラブ(白)は昏倒状態になって動きが止まるので、そうしたら離れて待機。すると、右上にあるファンが回転して小さいレモンたちを吸い込んでいくので、こちらも下方向に移動し続けて吸い込まれないよう耐える。しばらくしたらまたレモングラブ(白)が活動を再開するので、また攻撃して昏倒させて待機・ファンが回転…という手順を繰り返す。これを3回行うとファンが壊れてレモングラブ(白)が右往左往し始めるので、そうしたら今度はレモングラブ(黒)を攻撃すると、くっついていた異形の左腕が外れてクリアとなる。

 

・80F「チーズ製造マシーン

牛を乗せて高速回転しているマシーンを壊して停止させるのが目的となる。

マシーンが回転している間、光っているランプがあるが、これを攻撃してすべてのランプを壊すと機械が停まるので、その間に下のフロアに降りて機械本体を攻撃する。しばらくすると再びランプが点灯してマシーンが回転を再開するので、そうしたら急いで上に退避。この手順を繰り返していけばそのうちマシーンが完全に壊れてクリアとなる。

だんだん壊す必要のあるランプの数が増えていき、さらにラブグラブも乱入してくるのでやりにくくなる。ラブグラブをすぐ殲滅できる攻撃力は欲しい。

 

・90F「ガムボールの番人

2体の番人を相手にすることになるが、一体を倒すと、残されたもう一体の番人の攻撃が激しく変化して厄介。なので、一体を集中攻撃して倒すのではなく、2体に均等にダメージを与えていって、両方をなるべく同時に倒すようにすること。

番人を2体とも倒すと第二段階に移行。足場に3つのスイッチと、画面上部にモニターが出現する。復活した二体の番人が上下を移動しつつ交互に炎を吹きかけてくるので、とりあえずは火をかわすのに専念してひたすら逃げ回ればいい。

一番右のスイッチを押して答えを「4」にすればOK

モニターには難解な数式が書かれており、さらに数式の下に数字が表示されているが、この数字は数式に対するこちらの回答を意味しており、足場のスイッチを押すと数字の値が変えられる(足場の3つのスイッチは左から100の位、10の位、1の位に対応する)。しばらく待つと、モニターの数式は「2+2」に変化するので、そうしたらスイッチを押して答えの数字を「4」にすると勝利となる(※もちろん第二段階が始まった時からすぐ答えを4にして待ち構えていてもOK。モニターの数式が2+2に切り替わった瞬間、即勝利になる)。

 

・100F「ラスボス

※ブロック状態のときに触手の赤い弾を吸収できるマーセリンで戦うのが一番簡単かと思う。

(第一形態)

ガイコツを発生させるジェネレーターと、赤い弾を放つ触手が存在するが、両方とも倒してもまた復活するのでキリがない。赤い弾とガイコツの攻撃を回避しつつ、正面真ん中の「顔」付近をひたすら攻撃する。

リトライなどでサブウェポンが無くなっている場合は、ジェネレーターを倒すとBig AxeやCursed Swordが時々手に入る。また、ガイコツを倒すと時々回復アイテムを落とす。

「顔」にある程度ダメージを与えていくと、そのうち回避が難しい巨大な舌攻撃を使ってこちらを叩いたり、位置を動かしてくるようになるので、多少無理をしても早く倒したい。

(第二形態)

空間が縦に分割され、左右どちらかに閉じ込められる。第一形態と同じく顔付近を攻撃すればいいのだが、近寄ろうとすると叩かれてダメージを受けてしまう。なので、近寄らずに遠隔攻撃によってダメージを与えるようにする。ジェネレーターを倒すと遠隔攻撃のサブウェポンを落とすので、遠隔攻撃の手段がない場合はこれらを拾って使うこと。

中央にある敵の体からは、手が横に伸びてダメージを与えてくる。手が伸びる前に一瞬小さく飛びだすので、これを見て手の真横には立たないようにすること。

(第三形態)

空間を分割していた敵の体がひっこみ、横方向にバリアが張られてボスに近寄れなくなる。スペシャルアタックを使うとバリアが解除されるので、ボスに近寄って「HUG」を押すと、再びバリアが張られて画面下に戻される。これを3回繰り返せば勝利となる。

イマジネーションメーターは、ジェネレーターを倒した際に時々出現するFAIRYを取得してすぐに溜めることができる。

 

物語の真相、ラスボスについて(※ストーリーの核心に迫るネタバレあり

本作には原作者のペンドルトン・ウォード氏が参加していて、単なるアナザーストーリーに留まらず、じつはアニメ本編とも関わる重要な設定が描かれています。

地下迷宮から囚人たちが脱走している謎を解くため、フィンたちはダンジョンを探索することになるのですが、そのうちに実はダンジョンがバブルガムの秘密の研究室と繋がっていることがわかり、バブルガムは何かを隠しているようで疑わしくなります。

研究室の最奥である90Fに到着すると、バブルガムはここがダンジョンの最下層だから、もう地上に戻ったらどうかしら?と提案してくるのですが、これは嘘であり、研究室の壁に机で隠されたさらなる先へと続く通路が発見されます。

みんなから問い詰められたバブルガムは、じつはダンジョンを探索する間に騒動の原因がなんなのかもう気づいていたことを明かします。事件を自分の問題として1人で処理しようとするバブルガムはフィンたち一行に解散を言い渡しますが、放っておけないフィンは彼女の後を追います。

そして研究室のさらにその奥にはガム状の物体で覆われた空間(GUM HIVE)が広がっており、最深部の100Fでフィンたちが目にしたものは、バブルガムと同じピンク色の巨大なガムの塊でした。

戦おうとするフィンたちを制止しに現れたバブルガムは、巨大ガムの中に取り込まれてしまい、彼女を助けるためやむをえず戦闘となります。

戦いの末に巨大ガムはバラバラになり、助け出されたバブルガムはついに隠していた事実を語り始めます。実はこの巨大なガムはバブルガムの親なのだと言います。約1000年前、このピンクのスープの中でバブルガムは誕生し、やがて自我を持ち独立してプリンセスとなったこと、そして今の年齢は827歳であることを告白します。

バブルガムは原始の姿を保った彼らをずっとこの奥深くの空間に安置して守ってきたのでしたが、知らないうちにガムたちは壁の中に浸透しており、牢獄のドアを固定するネジの中にまで入り込んで、悪気なく囚人たちを解放してしまっていたというのが騒動の真相でした。バブルガムは自分の親を守りたくて、フィンやマーセリンといった友人たちにも秘密にして話せずにいたのでした。

バラバラになったガムたちは分子量が増えすぎて分離を引き起こしており、もはや再合体できなくなっていました。バブルガムは泡となって消えてゆく親たちと涙の別れを交わし、物語は幕を閉じることになります。

このバブルガムの親である巨大ガムは、アニメの「サイモンとマーシー」回でサイモンにチキンスープを渡したガム状生物と同じ見た目をしています。「サイモンとマーシー」を初めて見たときはこれがバブルガムの祖先か何かだろうか?と想像していましたが、このゲームにおいてバブルガムの親であったことがはっきり裏付けられたことになります。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

ボニーとネディ」では、巨大なガムのちぎれた部分からバブルガムとネディが誕生し、個体として独立していった過程が回想で示されましたが、それに先んじて、バブルガム誕生の秘密が本ゲームで説明されていたわけです。

この巨大ガム(「ボニベル・バブルガム」回での呼び名にならえば「ママガム」)になにか目的があったのかははっきり示されていません。

ただし、ラストバトルは、ママガムのハートを「HUG」、つまり抱きしめてあげることで、戦いが決着するのです。ママガムはこの場所に置かれてなにかしら寂しさを感じていて、それを解消してくれる他者を求めて外部を目指していたのではないでしょうか。ママガムが現れたバブルガムをすぐさま自分のなかに取り込もうとしたのを考えると、やっぱり離れて行ってしまった仲間のバブルガムにまた会いたかったのかもしれません。

 

【アドベンチャータイム】ビーモは男の子?女の子?

アドベンチャータイム屈指の愛されキャラである、ゲーム機型ロボットのビーモ。

同じロボットでも、ネプタ―の性別は?と聞かれたら特に悩むことなく「男の子」と答える人が多いと思いますが(アイスキングが息子って呼んでいるし)、ビーモの性別となると、答えに迷う人が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、男女それぞれの可能性を整理しつつ、改めてビーモの性別について考えてみようと思います。

ビーモが「男の子」だと言われる理由

まずビーモが男の子であると言う意見に立って考えてみます。

 

・「ごっこ遊び」では、ビーモは男性の役割になりきることが多い。

(例)「ビーモは名探偵」→ハードボイルド探偵

   「ビーモはカウボーイ」→神から逃げた男・エンジェルフェイス

 

・「究極のサンドイッチ」や「振り返ればクマがいる」の描写では、ビーモはスケボーやサッカーなど、男の子がよくやる遊びを好んでいる。

 

・「5つの物語」では、鏡に写るもう1人の人格であるフットボールとの会話で「ビーモは元気な生き物だよ」とビーモが言うが、オリジナルだと「小さな生きている男の子だよ(I am a little living boy)」と言っている。

ちなみに、フットボールのほうは、「続・5つの物語」において自分のことを「あたしはもう立派な生き物」と言うが、オリジナルだと「あたしは本当の女の赤ちゃん(I'm a real baby girl now)」と言っている。フットボールは明確に女の子らしい。

 

・「ビーモの成長」で、逃げだしたエイモに向かってビーモが言うセリフは、日本語版だと「ビーモから逃げられると思うなよ」だが、オリジナルでは「 誕生日の男の子からは逃げられないぞ!(You can't escape the birthday boy!)」と言っている。

 

・「父と娘のカード・ウォーズ」で、チャーリーから「ビーモは男だって出てる」と占いの結果を告げられたとき、オリジナルだとビーモは「Okay(いいよ・わかった)」と答えて受け入れている。

 

ビーモを表す三人称には男性を指す「he」が使われることが多い

(例)

「家の中で大冒険」のフィン→「ビーモがもっと面白いゲーム作ったって空想してみて(そして新しいバッテリーも入っているって)」(Imagine that BMO invented a better video game, and that he has new batteries)

「ゲームに夢中」でのねぼすけサムのセリフ→「あいつは危険だ。またスイッチを押されたら閉じ込められちまう」(he's dangerous.if he hits his button again,back we go)

「ナイトスフィアの支配者」でのビーモに電話をかけようとするジェイク→「ビーモだ。なんか知ってっかもしんねえ」(see if he knows what happened)

「ビーモのルーツ」でのモオ→「(ビーモに)家族を見つけて欲しいと願いながら」(hoping he could find a family of his own)

 

・シーズン8「見ちゃいけない」では、魔法の目を持ったフィンに見つめられたビーモは人間の男の子の姿に変わっており、フィンはビーモのことを小さな男の子だと認識している

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

ビーモが「女の子」だと言われる理由

今度は逆に、ビーモは女の子であると言う意見に立って考えてみます。

 

・英語オリジナルにおいて、ビーモの声をあてているのは女性であるニキ・ヤング氏である(※アメリカほか海外だと、少年キャラクターは男性声優が演じるのが一般的であり、日本のように声変わり前の少年キャラクターを女性の声優が演じるというケースは少ないため、「ビーモの声優は女性なんだからビーモは女の子でしょ?」という論理が成り立つ)。

 

・「ツリートランクの結婚式」の描写では、ビーモは「結婚式」や「お花」が好きだと話しており、どちらかといえば女性的な興味である。

 

・「ジェームズ・バクスター」の日本版では削除されている冒頭シーンにおいて、ビーモは卵をお腹に抱えて「妊娠」を演じていた。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

 

・「出港」において、ビーモが服屋で女性物のブラを選んで着ているシーンがある。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

 

・「キュートなキング」で、フィンが友人たちを集めてキューティー軍団に負ける作戦を説明しているシーンで、オリジナルではフィンがビーモを「milady(貴婦人、奥方)」と呼んでいる(ただし、このシーンはフィンが芝居がかった喋り方をしているシチュエーションなので、ふざけて呼んでみただけと解釈するのが自然かと思う)。

 

・「迷子のビーモ」において、男性と思われる(男性の声で演じられている)バブルから「結婚しないか」と求婚され、ビーモは了承している

 

・「父と娘のカード・ウォーズ」で、ビーモをタロットで占ったチャーリーは「ビーモは男だって出てる」と告げたあとで「ウソだよ。これは良い子って意味」と否定した。さらにビーモが海に飛び込んだ時には、オリジナルだとチャーリーは「彼女は石みたいに沈んでった!(She sunk like a stone!)」と言っており、ビーモに女性を指す三人称「she」が使われている(下の記事も参照)。

kurt555.hatenablog.com

 

結論は…?

とまあ、ここまで長々と書いてきたのですが、結局のところ、ビーモは男性でも女性でもない無性別であるというのが答えになるかと思います。

キャラクターの性別が反転して外見が大きく変化しているフィオナ&ケイク系列のエピソードでも、ビーモだけはまったく変化がありませんが、これもビーモが男・女どちらでもないことを表しているからと思われます。また、「The Adventure Time Encyclopaedia」という本でもビーモの項目において「this machine is obviously genderless(この機械には明らかに性別はない)」と記述されており、さらに「FINN&JAKE’S Official Guide」という本でもビーモの紹介ページには「sometimes he's also a she(彼は時々、彼女でもある)」という一文があるのです。

実際、作中でのビーモの姿を見ていくと男女両方のそれらしい特徴が含まれており、どちらか一方の性別だと完全に言い切るのは難しく、そのままビーモは男女のどちらでもない&男女どちらの要素も持っている両性的なキャラクターであると解釈するほうが理解しやすいと思います。フィンがビーモを男の子だとイメージしている一方、チャーリーはビーモを女の子とみなしているようですが、両性的なキャラクターであるだけに、周りの人がビーモに男女どちらの性別を見出しているかはその人の感じ方次第で異なるものなのでしょう。

ただし、ビーモは無性別といっても、英語オリジナルでのセリフでは「小さな生きている男の子だよ(I am a little living boy)」とか「誕生日の男の子からは逃げられないぞ!(You can't escape the birthday boy!)」と喋っているのを見ると、ビーモはどちらかと言えば自分を男の子だと思っているか、少年になりたいと憧れているようです。フィンが身近にいるので、少年に憧れがあるのは無理からぬところでしょうか(なりたいと思っても決してフィンと同じにはなれないところにビーモの悲哀があるのですけど…)。

日本語吹き替え版でもビーモのキャラを掴むまでやや時間がかかったらしく、「嫌われ者ドニー」「ゲームに夢中」など初期のビーモは自分のことを「わたし」と呼んでいたり女性的な印象でしたが、後々、一人称は男女のどちらともつかない「ビーモ」で固定されていきました。オリジナルのセリフと比較すると「living boy」を「元気な生き物」と訳すなど、日本語版はビーモの性別について、より無性別な印象を強めているのが伺えます。

女性の声で喋り、生きている少年に憧れがあって、スケボーやサッカーも好きだけど結婚式やお花も大好きで、カウボーイにもなりたいしブラも着てみたい…。ビーモはその時々で、ただ自分の好きなこと、やってみたいことを自由に選んでいるように見えます。フィンやジェイクもそんなビーモをただビーモとしてそのままを受け入れていて、何か言うことはありません。アドベンチャータイムは、女性であるプリンセスバブルガムが科学好きであったり、男性であるクッキーが慣例に負けずプリンセスになりたいと願う姿を描いていたり、旧来的なジェンダー表現に当てはまらないキャラクターが登場する作品です。ビーモのキャラクターにも、こうしたジェンダーフリーの考え方が込められているように思います。

【アドベンチャータイム】かつてウー大陸を旅立った少女の物語「ISLANDS」

※今回はいろいろ語りたいことが多くて、ストーリーの最後のほうまでネタバレしています。ご注意ください。

 

今回紹介するコミックは 「ISLANDS」。

脚本はAshly Burch氏、絵はDiigii Daguna氏が担当しています。

Ashly Burch氏はアニメ本編のスタッフでもあり、ミニシリーズ「island」編のストーリー製作にも関わった人物です。そんなアニメ版のスタッフが参加している本作のストーリーは、ウー大陸を離れた人間たちのその後を描いた作品となっています。

シーズン7の「Stakes」では、ヴァンパイアの脅威から逃れるため、トムをリーダーとする人間たちはウー大陸を離れ巨大船に乗って外海に旅立っていきましたが、その後シーズン8の「Island」には「始祖様の島(Founder's Island)」という場所が登場し、ウー大陸を離れたトム達は遠くの島に入植しており、無事に人間たちの都市を築きあげていたことが明らかになりました。

「始祖様の島」はそこで暮らす人々に安全で豊かな生活を提供するその一方で、島から脱出することは決して許されず、島に近づく者・島から出ようとするものを問答無用で攻撃する恐ろしいロボットの番人が海に配置されているという、きわめて閉鎖的な世界でもありました。

この島が出来上がるまでに、はたしてどんなことがあったのか、その謎の空白を埋めるひとつのピースになっているのが本作です。

 

物語は、船から始まります。ウー大陸を出発した人々の船は、新天地を目指して洋上を進んでいました。船には大勢の人が乗っており、リーダーのトムと、そしてうさ耳の帽子をかぶったジョーという少女がいました(ジョーは、アニメにも名前不明のキャラとして登場しており、本作で初めて名前が明らかになりました)。

今まで人々を守ってくれたマーセリンはもうおらず、不安な気持ちからか、ジョーは大蛇にとりまかれる悪夢にうなされたりしています。人の良いトムはジョーのことをよく気にかけ、楽器を演奏したりしてジョーを元気づけます。

「ISLANDS」より

航海中のある日、半魚人のモンスターが船を襲撃し、人々は武器をとってモンスターを追い払っていきますが、ジョーが誤って海に落ち、あわやモンスターに捕まりそうになったところをなんとか救助されます。マーセリンから水泳を教わっていたのが幸いして助かったものの、不安な気持ちがさらに増すジョー。

モンスターの襲撃によって、大人たちにも不安が広がっていました。今後に備えて軍隊よろしく1日8時間、射撃訓練やトレーニングに費やすべきとトムに意見する人も出てきますが、トムはそれをなだめます。

ジョーはウー大陸でマーセリンと過ごした時間を思い返していました。「ナイトベリー」を摘みにいってふざけあい、現れたヴァンパイアをマーセリンが頼もしく追い払ってくれたあの夜のこと…。

そんな長い船上生活の末、船はついにどこかの島へとたどり着き、人々は喜びます。

「ISLANDS」より

島には既に別の人間たちのグループがいましたが、争いになることもなく、食べ物を分け合って打ち解けることができました。さらに、この島には脅威となるヴァンパイアが住んでいないこともわかります。

トムはリーダーシップを発揮し、今後は皆で力を合わせてここに新しい家を建てていこうと宣言します。ようやく落ち着ける場所に来ることができて、人々はささやかな宴会で楽しく盛り上がりますが、ジョーだけは相変わらず不安な気持ちが消えないのでした…。

それからしばらくの歳月が流れ、島は開拓が進んで立派な町が完成し、そして今や動物の帽子をかぶっている人間はジョー1人だけになっていました(※この動物型の帽子は元々ヴァンパイアの牙から首を防御するために被っていたものであり、島にはヴァンパイアがいないので、他の人はもう被らなくなっていたわけです)。1人だけ帽子をいつまでも脱ごうとしないジョーは悪ガキたちにからかわれて追い回されますが、どうしても帽子を脱ぎたくないのでした。

「ISLANDS」より

悪ガキに追われていたジョーはトムによって助けられ、島の探検へと誘われます。ジョーはあまり乗り気ではなかったものの探検に同行しますが、森で見かけた巨大鳥をつい大きな声で刺激してしまい、鳥にさらわれてトム達からはぐれてしまいます

真っ暗でどこかもわからない森の中にたった一人で遭難し、どうしようもなく心細い状況のジョー。森でナイトベリーの実を見つけ、マーセリンのことを思います。「マーセリンならどうする…?」…するとジョーの傍にマーセリンの幻影が現れます。

「えーと…あんたはどうしたいの?」

「家に帰りたい。トムに会いたい」

「家はどっちなの?」

「知らないよ!自分がどこにいるのかだってわかんない!」

「簡単に調べる方法があるよ」

マーセリンの幻影から教えられ、高い木に登ってあたりを見渡したジョーは、町の風車を遠くに見つけ、帰るべき方向を知ることができました。しかし帰る道のりの困難を想像して心がくじけてしまい、またマーセリンの幻影がジョーを励まします。

「絶対うまくいきっこないよ…」

「あんた、最後までをすっとばし過ぎだよ。この仕事は一度に一歩ずつ進めなきゃならないんだ。良いニュースはね、あんたはもう難しいパートはもう終わらせてるってこと」

「わたしが?」

「うん。あんたは最初の一歩を踏み出したんだよ」「一歩ずつ行くんだ…」

「ISLANDS」より

トムたちのいる町に帰ろうと、ジョーは長い旅を始めます。木の実や魚を採って食べ、森の小動物たちと触れ合い、自然の洞窟で雨をしのぎ、自力で火をおこすことを学び…サバイバル生活のなかでジョーはたくましく強く成長していきます。

「ISLANDS」より

いよいよ明日は町に帰れるという晩、ジョーは心を悩ましていた大蛇の幻影を克服し、マーセリンの幻影と最後の言葉を交わします。

「ねえ、マーシー?」

「ん?」

「私、またあなたに会えるかな?」「ほら、”私の頭の外”で…?」

マーセリンの幻影は、ジョーの顔を指でそっと触れると、姿が見えなくなりました。

夜が明けて、ジョーが久しぶりに町に帰ってくると、様子が以前と違っていました。人々はまた昔のように動物の帽子をかぶっていて、町の外では大きな人形のようなものを建設するために人々が働いており、あの人の良かったトムは皆を働かせるため大声を張り上げていました。

思いがけないジョーの帰還に人々は驚き、待望の再会を果たしたジョーとトムは抱き合います。

トムはジョーがいなくなってからのことを語り出します。あの日、ジョーが鳥にさらわれてしまったことでトムは自分を責め、もう誰も失いたくないという思いを固くしていました。そして自分たちを守り、島中を回って脅威を叩く「番人(gurdian)」を建造して、この地を独占しようと計画を進めていたのでした。 

陽気で落ち着いたかつての姿はもはやなく、トムの振舞いには狂気すら感じられ、ジョーはそんなトムにたいして異を唱えます。

「トム…そんなことはできないよ」

「なんでダメなんだ?」

「だって、そんな…そんなこと間違ってるよ!私は間違ってた。ここは怖くないよ。ベリーをくれる小さなネズミ、美しい小川、話のわかる蛇もいるんだ。それって本当に本当に素敵なんだよ!火の起こし方を教えてあげるよ!」

「君はどこにも行かないんだ。誰一人として…。私たちはここにいるんだよ。もう誰も失うつもりはない!」

「でも、あなたは私を失わなかった…」

「ISLANDS」より

ジョーは町へは帰らないで、また森に戻ることに決めます。ジョーの考えに同意した何人かの人々はトムの元を離れ、ジョーと共にいく道を選びます。

トムの前にはジョーのあの帽子が残され、トムは行かないでくれとジョーの名前を呼び続けるのでした…。

(あらすじおわり)

 

 

最初に述べたように、本作はアニメ版のスタッフでもあるAshly Burch氏が関わっており、本作の内容はアニメ版の公式な設定と考えられているようです。私としてもこれはアニメ版と設定を同じくする物語だろうと受け止めています。アニメでは描かれなかった空白を埋めてくれる物語というのは、やはり惹かれる題材ですね。

しかし読む前は予想もしていなかった切ない結末で…うーむ、トムとうさ耳少女に、あの後こんな物語があったとは…。

「始祖様の島」がフィンたちの時代に至るまでにどんな歴史があったのか気になっていたのですが、島を守る「番人」はトムの時代から既に建造が始まっていたことになります。フィンたちの時代のあの巨大ロボットの姿にたどり着くまで、数度のモデルチェンジがあったのでしょう。

物語はトムとジョーの離別の場面で終わっていますが、この後のことを想像すると両者がすんなり別れられたのかも疑問が残ります。平静を失ったトムが力づくでジョーたちを連れ戻したとしても、不思議ではない気がするんですよね。フィンたちの時代には、島からの脱出は「捕らえる者(seekers)」によって全力で阻まれる体制が出来上がっていましたが、その制度もこのトムの時代から始まっていたんじゃないかと思っています。それもこれも、仲間を失いたくないというトムの気持ちがきっかけになったというのがまた切ないです。理性的で人の良いおじさんだったトムが最後には狂気じみた顔つきに変わってしまっているのがまた悲しくて恐ろしく…。

大蛇のイメージに象徴される、外の世界への恐怖におびえていたジョーが、サバイバル生活のなかで生活力を培い不安を克服していった一方、逆にトムたち町の人々が外の世界へ進出することを恐れて閉鎖的な社会に向かってしまったのは皮肉です。

島にヴァンパイアがいないことを教えられても、ジョーが帽子を脱ぐことができなかったのは、帽子をかぶることがそのままの機能以上に不安を軽減する役割を果たしていたからなのでしょう。とはいえ一度脱いだ帽子をトムたちがまた被りだしているのは不思議な気がしますが、これも全員が不安におびえているためというより、過剰に不安に陥ったトムが皆に被るよう強制していると考えたほうが腑に落ちる気がします。ジョーのほうは逆に帽子を最後には脱ぎ捨てていくのが対照的でした。動物の帽子をかぶることは「始祖様の島」の住人たちにずっと引き継がれ、主人公フィンのトレードマークへとつながっていくことになります。もっともフィンやミネルバの時代には、ヴァンパイアの牙を防ぐため、という元々の機能はもう忘れられているのでしょうね。

トムとジョーの関係を見ていると、ミネルバとフィンが重なります。自分と一緒に島の中で安全に暮らすことを望んだミネルバと、外の世界に帰ろうとしたフィン、これは本作でのトムとジョーの関係と非常に近いものです。しかしトムとジョーが不本意に袂を分かつ結果になったのとは違って、フィンとミネルバは最終的に和解に達し、さらに閉鎖的な島のシステムは撤廃されることになります。ジョーの時代には閉じてしまった社会が、フィンの時代にまた開かれる。トムとジョーが、ミネルバとフィンの関係に似ているのは、意図的な対比なのだと思います。

また、剣を担いだジョーの姿がフィンを思わせるんですよね(もっと言うとジョーはうさ耳の女の子なんでフィンよかフィオナのほうにもっと似ていたり)。森で地に足のついた生き方を選んだジョーの一族の末裔がフィンなのか、あるいはフィンの過去世のひとつがジョーなのかもしれないと想像が膨らみました。ジョーがフィンの過去世か祖先とすると、1000年後フィンとマーセリンの出会いがまた感動的に思えてきます。まあ、そんなはっきりした血縁関係でなかったとしても、あの時マーセリンが命をかけて人間たちを助けた結果として始祖様の島が築かれ、巡り巡ってフィンが誕生したのだという事実だけで十分感動的なのですけど。

マーセリンは本作においてジョーの回想か心の幻影としてしか登場しませんが、ジョーを導く良き友として大きな存在感がありました。これを読んだあとにアニメの「かわらないもの、かわるもの」を見直すと、また感慨深いものがあります。

今回、フィンとかジェイクとかマーセリンといったメインキャラは直接出てこず、本編ではいたって脇役でしかないトムやジョーたちの物語であるというのが、また良いと思ったんですよね。アドベンチャータイムの世界はフィンやジェイクたちばかりのものではなく、それぞれの時代・それぞれの人々に同じくらい大事な物語が存在するんだと思えるからです。

本作はストーリーももちろんのこと、Diigii Daguna氏の絵もまたとても良かったです。アニメ本編とはまた趣が異なるラフな画風なのですが、キャラクターが生き生きとしていてかわいらしく、親しみやすくて良い絵だなと思います。特に最後のりりしく変わったジョーの顔つきが強く印象に残りました。

www.diigiidaguna.com

 

ちなみに本作、最後が「The End...?」となっていて、気になる終わり方をしてるんですよね…。とはいえ、いまのところ続刊はないようです。

【アドベンチャータイム】見ているだけでも楽しい料理本「The Official Cookbook」

今回紹介する本は「The Official Cookbook」。

この本はアドベンチャータイム関連書籍のなかでも少々特殊で、タイトルの通り料理本です。アドベンチャータイムはやたらと食べ物や食事シーンが出てくる作品なので、そこに注目したこの本はユニークでとても良いと思います。

最初のページには、主人公フィンによるイントロダクションが書かれており「料理の本を発見したものの、多くのページが欠けていたので、ウー大陸の仲間たちに協力してもらってレシピを追加し、本を新しく作り直した」…という本書のバックグラウンドストーリーが説明されています。

つまり、「既成の本の上に、フィン達が自分たちで勝手に新しい文章や写真を追加している」という設定で書かれているので、デザインがなかなか凝っていて面白いんですよね。上の表紙の写真もよく見るとわかるのですが、破れた紙を上から被せている見た目になっています。

では、本文にはどんな料理が載っているのか、目次で数えてみると54種類の料理が収録されているのですが、そのなかから一部を紹介しましょう。

 

(朝食)

・Bacon Pancakes「ベーコンパンケーキ」(ジェイクより)

・Banana Guard Banana Bread「バナナガードのバナナブレッド」(バナナガードより)

・Cinnamon Bun「シナモンバン」(シナモンパンより)

※キャンディピープルのシナモンンは、オリジナルだとシナモンン(Cinnamon Bun)という名前です。

(前菜)

・Ultimate Cheesy Nachos「究極のチーズナチョス(ジェイクより)

・Flame Kingdom Wings「ファイヤー王国の手羽(フレイムプリンセスより)
・Chili of the Nightosphere 「ナイトスフィアのチリ」(ハンソン・アバディアより)

(メインディッシュ)

・Princess Bubblegum's Perfect Sandwich 「プリンセスバブルガムの完璧なサンドイッチ」(プリンセスバブルガムより)
・Anti-Demon Fried Rice「悪魔除けのチャーハン」(ジャーメインより) 
・Everything Burrito「なんでもブリトー(ジェイクより)  

・Hamburger Monster「ハンバーガーモンスター」(フィンより)

(サイドディッシュ)
・Multiverse Pickles「多元宇宙のピクルス」(プリズモより) 
・Grass Sword Spicy Green Beans「”草の剣”のスパイシーさやいんげん(ジェイクより)
・Marceline's Fries「マーセリンのポテトフライ」(マーセリンより)

(飲み物)

・Super Porp「スーパーポープ」(マーセリンより)
・Fruity Punch From That One Dream「ある夢からのフルーツポンチ」(宇宙フクロウより)
Honey Energy Drink「はちみつ栄養ドリンク」(パーティーパットより)

(デザート)

・Finn Cakesフィンケーキ」(フィンより)

・Lady Rainicorn/Lord Monochromicorn Bundt Cake「レディレイニコーン/ロードモノクロミコーンのバンドケーキ」(アイスキングより)
・Pink and Fluffy Cream Puffs「ピンクでふわふわのシュークリーム」(プリンスガムボール)
・Chips & Ice Cream「チップスとアイスクリーム」(ビーモより)
Ooo-Famous Apple Pie「ウー大陸の有名なアップルパイ」(ツリートランクより)…

どうでしょう、アニメに登場したあんな食べ物やこんな飲み物に加えて、これはいったいどんなものだろうと気になってしまうオリジナルの料理まであって、もう名前を見るだけでもわくわくしてきますよね?(ちなみに、フィンの好物であるはずのミートローフはありません。意外)。

個別のページをちょっと紹介するとこんな感じ。

さすがに全部ではないのですが、多くのページに料理の写真が載っていて豪華です。

写真とイラストを組み合わせたグラフィックが見ていて楽しいです。ある程度アレンジされてるとはいえ、やっぱりアニメに出てきた食べ物がこうして現実に再現されているのを見るとなんだか感動しますね(特にフィンケーキみたいな形が特徴的なものは…)。

なお、料理本としても実践的でして、どの料理にも準備する材料から調理工程までちゃんと載っています。

料理の写真を眺めているだけでも楽しめるのですが、それぞれの料理に載っているキャラクターのコメントがまたネタてんこ盛りで面白いんですよ

例えば「スパゲッティ&ミートボール」のページでネプタ―が「命を吹き込まれる前に、この料理が電子レンジだった自分の体に何度も押し込まれたことを覚えている…!」と書いてたり、アイスキングがイラストを描いている「レディレイニコーン/ロードモノクロミコーンのバンドケーキ」でジェイクが「なんだよこれ、レディが俺様の知らない馬とケーキ作ってるけど、誰だよ!」ってツッコんでたり、「シナモンバン」の調理レシピを読んだシナモンパンが「待って、ぼくいつオーブンに入ったの?いつ出てきたの?これは僕の過去の暗い秘密を明らかにしてるよ!」とショックを受けてたり、ハンソン・アバディアがレシピ提供した「ナイトスフィアのチリ」では材料の部分に「オプションで:もし死者を蘇らせるなら刻んだゴーストペッパーを入れる」なんてことがしれっと書いてあったり、その料理やキャラクターの設定についてのネタをちゃんと拾いつつ読んでいて面白い文章になっていて、ほんとアドベンチャータイムのことをよくわかっている人が作ってくれた本なんだな~と嬉しくなります。

ちなみに、この本は2016年とアニメの放送が後期の頃に出版されていまして、読む前にシーズン8の最後まで見終えておくことをおすすめします。フィンにとって料理とはどういうものか、そもそもフィンが見つけた元々の料理本はどういう本だったのか…本のバックグラウンドストーリーの意味がシーズン8の最後まで見ておかないと理解できないので、そこはご注意ください。

価格は少々高めですが、ハードカバーのしっかりした造本で写真も豊富、これはおすすめできる本です。

 

 

 

…で、こういう本を持っている以上は、載っている料理をひとつくらい作ってみるべきなのでしょうが、まだ実行に移せておりません…。代わりに、実際に調理しておられる方がいましたので、動画のリンクを貼っておきます。

www.youtube.com

【アドベンチャータイム本】ビーモ視点のキャラ紹介「BMO'S CHARACTER FILE」

アドベンチャータイムの関連書籍をいくつか紹介しようと思います。

今回紹介する本は「BMO'S CHARACTER FILE」。

背表紙・裏表紙にもビーモの外見がデザインされています。かわいい。

(私が持ってる本はあんまり状態がよくありません)

著者はBrandon T. Snider氏で、これ以外にも「Hero Time with Finn and Jake」「Finn and Jake's Island Travelogue」などのアドベンチャータイム関連本を執筆しています。

タイトルのとおり、この本は「ビーモによるキャラクター紹介」という設定で(ビーモになりきって)書かれています。

BMO'S CHARACTER FILE」より


各キャラは「SPECIES(種族)」「ALIASES(通称)」「HAIR COLOR(髪の色)」「STRENGTH(能力・長所)」「WEEKNESS(弱点)」「SPECIAL MOVE(特技・特徴)」「BATTLE CRY(戦う時の掛け声)」「BIOGRAPHY(生い立ち)」等の項目ごとに情報が記述されています。

基本的にアニメ本編を見ている人なら知っている内容であり、特に裏設定とかが載っているわけではありませんが、ビーモによる私情混じりの文章や、マニアックな小ネタが含まれていて読んでいてなかなか楽しいです。

例えばフィンの紹介ページはこんな感じ。「種族:人間」「通称:人の子、ディヴィー、バリバリ王子(prince hot bod)、フィン・マーテンス」「髪の色:金色」「長所:素晴らしい想像力とアドベンチャーのセンス」…ふむふむ、そうだったよねえと思っていたら「弱点:いつもパンツにおもらしする」なんてことが書かれていて笑いました(※フィンがおもらししてるっていうのは、「アイスキングの花嫁」のラストシーンでジェイクがスライムプリンセスに言った発言が元ネタです)

BMO'S CHARACTER FILE」より

他にも死の王のページでは「彼の顔は馬の頭蓋骨に見える。馬面ドクロ男と呼ばれるべきだと思うな。あ、いけない!いま言ったことは彼には言わないで。お願い!」と書かれてたり、通りいっぺんのキャラ図鑑ではなくて、読んでてクスっと笑える本なのが良いなと思います。

マーセリンとかバブルガムといったメインキャラは当然のこととして、それ以外のサブキャラも有名どころはだいたい載っていますが、出版されたのは2014年3月なので、反映されているのはシーズン5までのキャラクターとなっています。ジェイクの子供たちやプリズモのページもあります。

ちなみに最初に書いたようにこの本はビーモ視点であり、ビーモ回(「ビーモは名探偵」「迷子のビーモ」)に登場したゲストキャラであるニワトリのロレインやネズミのロニー、バブルやスパークルの紹介ページがあったり、一部けっこうマイナーなキャラも選出されていますスパークルの通称はやっぱり「リッキー」…。

BMO'S CHARACTER FILE」より

ポップなデザインの本で、パラパラ眺めてみるだけでも「こんなキャラいたなあ」と思い出されて楽しいです。

 

 

 

(ところで皆さん、この「Dr.Dextrose」って誰か覚えていますか?私はどこに出てきたキャラだったかまったく忘れていました…)。

BMO'S CHARACTER FILE」より

 

【アドベンチャータイム】ヴァンパイアハンター時代のマーセリンを描いたコミック「THE MOON - ECLIPSE」

アドベンチャータイムのコミックで日本語版が出版されているのはごく一部で、他にも沢山の作品があります。

今回紹介するのはそうした未邦訳コミックのひとつ「THE MOON - ECLIPSE」。

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS』というアドベンチャータイムの短編コミック選集の『Volume Five』に収録されています(※おそらく本作は当初『Adventure Time 2015 Spoooktacular』として発表されていて、再録される際に『THE MOON - ECLIPSE』というタイトルが付けられたみたいです)


この「THE MOON - ECLIPSE」は、アニメ版のミニシリーズ「stakes」でも描かれたマーセリンの過去編・孤独なヴァンパイアハンター時代を題材にしています。こういうコミックはアニメ版とは独立したアナザーストーリーであることが多いのですが、本作はやや異例で、アニメ版と正式に繋がるストーリーらしいです。

それでこの作品、とにかく絵が素晴らしい。とても気に入りました。

強弱のついたくっきりした線ではなく、細い線によるややラフなタッチで描かれており、柔らかで暖かみのある絵柄です。コミック作品はアニメ版と画風の差異が大きかったりすることも多いのですが、本作はキャラクターの描き方や表情のつけ方もアニメ版のイメージそのままで、違和感がありません。それもそのはず、このコミックはアニメ版のストーリーボード製作スタッフであるHanna K. Nyström氏が執筆しているんですね。

Nyström氏はアニメ版のシーズン7頃から参加しているスタッフで、最終回のあの印象的なキスシーンを手掛けた人物でもあります。描かれる絵がかわいらしくて上手。一コマ一コマが絵として完成されていて、とても魅力的です。

ストーリーはと言えば、吸血鬼フールを倒した後の、マーセリンがトムたちとまだ出会っていない時期が舞台のようです。

シュワブルとともにヴァンパイア退治の旅を続けているマーセリンは、かつてサイモンと共に過ごした思い出の土地を訪れていました。

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

サイモンといた日々を懐かしく思い出すマーセリンでしたが、謎の球体が地面に落ちていたり、何者かの気配を感じたり、なにやらこの土地は雰囲気が怪しい…。

やがて大雨が降り出し、雨をしのげる場所に入って休むことに。マーセリンはなんだか気落ちして、シュワブル相手に呟きます。

「なんであたしたちはここに来たんだろう?捨てられた幸せな思い出を、すべて蘇らせるために? そんなの本当に馬鹿げてる。ねえ、あたし何をしてるんだろう?ここにいるべきじゃないよ、シュワブル」

「ヴァンパイアを追うべきだったんだ…幽霊じゃない...」

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

翌朝、食べ物を探していたマーセリンが食糧庫を見つけてこじ開けると、中からヴァンパイアの群れが出現、しかし日光を浴びてすぐ消滅してしまいます。

たくさん食料が手に入って喜ぶマーセリンの前に、人間たちが現れて武器を突きつけます。彼らはこの土地にやってきたマーセリンのことをずっと監視しており、これまでの怪しい気配の正体は彼らでした。

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より 

リーダーは、マーセリンがヴァンパイアではないが別の異形の存在であることを察していました。ヴァンパイアから食糧庫を解放してくれたことを感謝しつつも、仲間として受け入れる気はなく、自分たちを追ってこないようにとマーセリンに言いつけます。

しかし、この土地にはヴァンパイアのボスがいるという子供の言葉を聞き逃さなかったマーセリン。ヴァンパイアの情報を得るため、追いかけてくるなという言いつけに逆らって後を追い、人間たちの居住地へとたどり着きます。

子供たちは大人と違ってフレンドリーで、マーセリンはツイッギーという少女と仲良くなります。ツイッギーによれば、この土地はヴァンパイアの領土であり、人々は夜の間はヴァンパイアから見つからないよう、隠れ家に身を潜めてやり過ごしていると言います。

その夜、マーセリンは吸血鬼を探して山を巡りますがその姿を見つけることができず、居住地に戻ってツイッギーと再会したところ、ヴァンパイアの眷属たちが出現!マーセリンの動向は逆に相手に補足されており、不覚にもヴァンパイアたちを隠れ家まで案内してしまったのでした。

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

破れかぶれにヴァンパイアの群れに突撃するマーセリンでしたが、敵の多勢に抑え付けられ窮地に。その時ツイッギーがピクルスのニンニク漬けを投げつけてくれたことでヴァンパイアたちは退散、マーセリンは九死に一生を得たものの、無鉄砲なマーセリンの行動をツイッギーは叱ります。

「あなたがヴァンパイアに捕まったら、だれがシュワブルの世話をするのよ!ねえ?そのこと考えたことあるの?」

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

マーセリンのせいで隠れ家がヴァンパイアたちに突き止められてしまったため、人々は別の土地へ移動しなければならなくなります。自分たちには近づかないように頼んだのに…とリーダーから非難されるマーセリン。ツイッギーからは、私たちと一緒に行かない?と誘われるものの、その申し出を断って、再びシュワブルとともにヴァンパイアを探しに出ます。

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

そうして森を探索すると、謎の球体がまた地面に落ちているのを見つけます。この球はヴァンパイアに関わるものかも…?と想像するマーセリンの目線の先には、怪しい小屋が。

そして、小屋のなかでマーセリンが出遭ったものは…。

(あらすじここまで)

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

長さは30ページほどで短編と言えるボリュームですが、内容はじつに濃密です。

マーセリンの心情が丁寧に描写されていて、優しいタッチで描かれるしっとりと情緒的な物語に浸ることができました。いつものアドベンチャータイムらしいシュールなコメディ路線とは一線を画した、リアルな情感がマーセリンの過去編の良さですね。

サイモンが去って、ハンソンとも別れ、シュワブルとたった二人だけでヴァンパイア退治の旅を歩んでいるマーセリンの寂しげな姿にはなんとも心動かされてしまいます。マーセリンがサイモンのことを忘れようにも忘れられず、ずっと想い続けているのがやるせない…。

そんなマーセリンの旅にも、一期一会の出会いがあって、少しの間ながら人々と心を通わす瞬間が印象的に描かれます。マーセリンを怖がることなく迎え入れてくれようとするツイッギーとの交流には心がほっこりします(とはいえ深い関係にはならず、すぐに別れることになるのがまた切ない)。

マーセリンに厳しい態度を崩さないリーダーが、それでも「ツナはとっておけ」と缶詰を譲ってくれるところなんて、ほろっと来るシーンです。

『ADVENTURE TIME : SUGARY SHORTS Volume Five』より

また、本作では犬のシュワブルがマーセリンの良き相棒として存在感を発揮していて、ツイッギーたちに構われたり、マーセリンの側を離れずついて回ったりする様子が実にかわいらしいです。アニメではほとんどわからなかったマーセリンとシュワブルの絆がしっかり描かれており、タンタンとスノーウィーみたいなこの関係はやっぱりアニメのほうでも描いて欲しかったですね。

そして、後半に〇〇〇が登場してくるのが本作の重要なところアニメの「Stakes」では「過去のマーセリンは〇〇〇〇〇や〇〇〇と戦った時、どうやって勝ったのか?」というのが描かれておらず不明な部分でしたが、本作では〇〇〇との対決がクライマックスであり、謎の一端が明らかになっています。バトルも熱い展開で、ラストの読後感は爽やかです。「Stakes」を見終わった人には是非読んでほしい…。

絵も素晴らしく魅力的で、短編として完成度も高く、マーセリンの過去を補完する一編として多くの人に読まれて欲しい作品なのですが、例によってあんまり手軽に入手できる本ではないのが残念なところです。

【アドベンチャータイム】日本語吹き替え版と英語版のセリフの違い

 

アドベンチャータイムの吹き替え版はもちろん大好きで、声優さんたちの演技も素晴らしく最終回まで楽しませてもらったのですが、やはり翻訳作品の常として、セリフがオリジナルの英語版そのままとはいかず、意味が変更されたりしています。

この記事では、吹き替え版でセリフの意味が変更されているシーンについて、興味深い箇所をいくつか紹介してみようと思います。

 

8話Aパート『人生のお楽しみ(What is Life?)』

フィンのアイスキング城への潜入を助けた風船たちは、笑顔で「それじゃあまたねー」「ちょっと、しぼんできちゃった」と言って空へと昇っていきますが…実はこれ、オリジナルだと「またねー」どころか「イェーイ中間圏へ!」「ついに死ねる!」と言って自分たちが滅ぶことを喜んでいるシーンです。

この風船たちがこれ以降、二度と再登場しなかった理由がわかりますね(死にたかったのか、風船たち…)

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
16話Bパート『スローな愛にしてくれ(Slow Love)』

・スノーロックに男女の会話の手本を見せようと、ジェイクがメスのカタツムリに化けて「私、素敵な殿方に会いたいと思ってたの」と作り声でしゃべりますが、オリジナルだと「タツムリとの交尾について考えていたの」と言っています(フィンが「やめろ!」と強く拒絶するのも納得…)

・また、ジェイクとのロールプレイをフィンが拒否すると、スノーロックが「代わろうか?」と言ってきますが、実はここもオリジナルだと「きみ(ジェイク)と交尾したい」と、あけすけなことを言っています。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
18話Bパート『ご両親にご挨拶(Her Parents)』

終盤、フィンとジェイクがレイニコーン両親と謎肉を食べるシーンの会話は、実はオリジナルだとけっこう怖い内容です。

日本語吹き替え版だと、 ジェイクが皿に盛られた肉を見て「で、こりゃ何の肉?」 とけげんな顔をしながら尋ねると、レイニコーン母が「知らなーい?これは"豆の肉"よ」 「見た目はちょっと味気ないけど、懐かしい味がしておいしいの」と答え、そして肉を食べてみたジェイクは「フィン、これ美味いぞ!」と目を輝かせながらフィンに語りかける…という流れになっています。

ところがオリジナルだと、 肉を見てジェイクは「これ、人間じゃねえのか?」と言っており、それに対してレイニコーン母は「あら、これは"ソイピープル"よ」 「私は人間を食べたことはないけど、違いがわからないと言われているわ」ということを答えていて、肉を食べてみたジェイクは「フィン、お前って美味いな!」と言っているんですね。

さっきフィンを食べようとしていた両親が、今度は人間と味の区別がつかないというソイピープルをおいしそうに食べているという状況がなかなかホラーだし、ソイピープルを食べてみたジェイクが「お前って美味いな(人間っておいしいんだな)!」と屈託なくフィンに言うあたりもブラックで笑ってしまいますが、これを日本語版ではそのまま表現するのはアウトと判断されたようです。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
23話Bパート『映画を僕と共に(Go with Me)』

結構有名な話ですが、マーセリンがバブルガムに「ハロー、ボブルガム」と声をかけるシーンは、オリジナルだと「ハロー、ボニベル」と呼んでいました。

「ボニベル」とはバブルガムの本名ですが、シーズン2の時点では吹き替え版の翻訳者の方も、これがバブルガムの本名だとは知らなかったのでしょう。マーセリンがバブルガムをからかってヘンな名前で呼んでいるシーンなんだと思って、もっとわかりやすく「ボブルガム」という呼び名にしてしまったようです。

一見バブルガムと険悪そうなマーセリンは、実は本名を知っている(気軽に本名で呼んでも許される)くらいにバブルガムと親密な関係であったことがさりげなく示されているシーンであったのが、吹き替え版ではそのニュアンスがいまいち伝わらなくなっているのは残念ですね。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
28話Bパート『必殺お仕置き人(Hitman)』

・このエピソード、フィンとジェイクを一発殴ってやりたいと思ったアイスキングが、自分の代わりに2人をヒットして(=殴って)くれと頼んだつもりで、「ヒットマン(=殺し屋)」のスコーチャーに依頼を送ってしまい、ただ2人を殴ってほしいだけのアイスキングと、ガチで2人を殺そうとするスコーチャーのズレたやりとりが笑い所なのですが、日本語版では「ヒットマン(Hitman)」を「必殺お仕置き人」と訳しているので、このあたりのおかしさがいまひとつ理解しにくくなっています。おそらく、日本語版だと「殺し屋」とか「ヒットマン」といった物騒な表現を使えないのでしょう。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

・後半、スコーチャーは紙を1枚残して去っていき、吹き替え版ではアイスキングがその紙に書かれた文章を見て「人を呪わば穴二つ?」と呟くのですが、映像をよく見てみると別にそういうことは書かれていません(実はアイスキングが呟くのは日本語版固有の演出で、オリジナルだとこのシーンでアイスキングは無言です)。

紙には「Echoes of past events nudge the tiller on my present course I await its reflection in the future.」と書かれています。「過去の出来事の残響が、私の現在の進路を耕している。私はそれが未来へと反映されるのを待つ」…とかそんな意味でしょうか。 深読みすると、アイスキングの過去がいよいよ明かされるという前フリである気もします。

スコーチャーがこういう意味深で詩的な文章を残していくというのがシュールな笑いなんですが、日本語版ではわかりやすく「スコーチャーはアイスキングの行動を『人を呪わば穴二つ』と揶揄して去っていく」という話の流れにしたようです。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
34話Aパート『君の悲鳴が聞こえない(No One Can Hear You)』

エピソードの最後に、バブルガムが「私があの鹿にキスを許さなかったの。それでこの騒ぎ」と語りますが、オリジナルだとここは「鹿は私たちの砂糖を欲しがったけど、私は何も与えなかったの。言ってる意味わかるでしょ?」…と話しています。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

つまりあの鹿はキャンディ王国の砂糖を舐めたかったのに、それを拒否されたのでキャンディーピープルたちをベトベトに固めて自由を奪い、舐めまくっていたということだったんですね(最初にスターチーを舐めてるシーンからも理解できます)。

ただ、最後にPBが「if you know what I mean(言ってる意味わかるでしょ)」と言ってからチュッチュッとねず鳴きするシーンがあり、なにやら言外の意味があることを仄めかしてるのが気になる点です…。  

おそらく吹き替え版の翻訳をした方は、PBの言う「鹿が砂糖を欲しがった」というのを言葉通りの意味ではなく「鹿がキスを求める」ということだと思って、「私があの鹿にキスを許さなかったの」と訳したんじゃないかと思います。

ただ、私の解釈としては、たぶん鹿は単に砂糖を舐めたかっただけで、PBが最後に言いたかったのは「私たちの体をペロペロと舐められちゃうから拒否したのよ(ほら、言わなくてもわかるでしょ?)」ってことなんじゃないかと考えているのですが、どうでしょう?

40話Bパート『二人のために世界はあるの(Dream of Love)』

・ツリートランクと引き離されたブタさんが酒場で「元のひどい暮らしに戻るしかないか」と呟きますが、実はここはオリジナルだと「犯罪者を食べることに戻ると思う」と言っています。
ブタさんは「りんご泥棒」回で初登場した時は犯罪組織に飼われており、フィン達を食べるために連れてこられていましたが、どうやら本当に生きたままの人間や死体を食わされる仕事をさせられていたんですね(怖!)

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
43話Bパート『パパのやんちゃ娘(Daddy's Little Monster)』

記憶を失ったフィンとジェイクが、ケータイの録画を再生していると、怪物化したマーセリンに襲われるシーンで、ジェイクが「やべえぞ、気を付けろ」と叫びますが、オリジナルだとここは「俺様の海馬が!(my hippocampus)」と言っています。

海馬といえば、記憶に関わる脳の器官です。つまり、フィンとジェイクが記憶を失っていたのは、海馬になんらかの攻撃を受けたためだったようです。

日本語版は海馬のくだりを訳してないので、録画を見返した後でジェイクが「記憶をなくしちまったわけはわかったけどよ」と納得している理由がわかりにくくなってますね。

ちなみに「Marcy's Super Secret Scrapbook!!!」では、サイモンと出会った時のマーセリンは過去の記憶を無くしていたことが記述されていますが、これもナイトスフィアのお守りが持つ能力となにか関わりがあったのかもしれません。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.
47話Aパート『火星の子どもたち(Son of Mars)』

・マジックマン(※中身はジェイク)に対して、火星の王が「昔は実に立派な男だったのに、マルグリスと付き合ってからお前はすっかり変わってしまった」と嘆きますが、ここはオリジナルでは「マルグリスとオリンポス火山で過ごしたあの夜までは、本当にクールな男だったことを覚えている」と言っていました。

過去にオリンポス火山でマジックマンとマルグリスに何か事件が起こったことが、この時点で既に示されている重要なセリフですが、日本版だと「マルグリスと交際したことでマジックマンの性格が変わってしまった」というような口ぶりになっているので、ちょっと本来の意味からズレてしまっています。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

・また、ジェイクが死んで現れたフィンを見て、グロドが「マブダチってのはお前か!」と言いますが、オリジナルだと「The one you were prophesied to meet!」で、「出会うと予言されていた者ってのはお前か!」というセリフでした。

このグロブが言う「予言」とは何のことかというと、どうやらタイトルカードに描かれている謎の石板のことらしく、フィンとジェイクが火星に現れることは予言されていたようです

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56話Bパート『デイヴィーの平凡な一日(Davey)』

冒頭でドラゴンを倒したフィンに、ジェイクが「悪い奴に好き勝手させちゃなんねえぞ」と声をかけると、フィンは「うーん。うん」となんかしっくりこない曖昧な返事をします。

なんでフィンはこんな微妙な反応なのでしょうか?

じつはオリジナルだとジェイクは「悪い奴に好き勝手させちゃなんねえぞ」ではなく「 Don't let the dragon, drag on,」というシャレを言ってます

ジェイクは面白いと思ってシャレを言ったんだけど、聞かされたフィンのほうはうまく返せず「う、うん…」となってしまってるシーンなんですね。

しかし後半、デイヴィーは、そのつまんないシャレがきっかけでジェイクのことを思い出しフィンへと戻ることができました。

これはただのつまんないシャレがフィンとジェイクを再び繋ぐ言葉になる、というギャップが面白いので、吹き替え版の「悪い奴に好き勝手させちゃなんねえぞ」だと普通過ぎる気がしますね。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
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63話Bパート『愛が全て(The Suitor)』

この回、吹き替え版では、エピソードのラストでペパーミントバトラーが「私のブラコを返して!!」と怒ってPBにビンタするという唐突かつ意味のよくわからない終わり方になっており、戸惑った人も多いと思いますが、オリジナルのセリフを見れば、ペパーミントバトラーが怒った理由が理解できます。

吹き替え版でペパーミントバトラーは、ブラコを「イケメンに変えてくれ」と悪魔に言うのですが、オリジナルだと「歩く愛の磁石( walking love magnet)」に変えよう、と言っています。つまり、単純なイケメンというわけではなく、磁石みたいに他人を惹きつける存在にしてくれ、という意味だったようです。そして「歩く愛の磁石」に変わったブラコを見たペパーミントバトラーは見事に魅了されちゃったらしく、日本版だと「とても魅力的になりました」となってるセリフは、オリジナルだと「あなたとの赤ちゃんが欲しい!」ってペパーミントバトラーは言ってるんですね(!)

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

また、最後にペパーミントバトラーが言った「わたしのブラコを返して!」もオリジナルだと「You should have given him to me!」で、本来は「わたしに彼(ブラコ)を譲ってくれればよかったのに!」って意味で怒っていたワケです。

日本語版は「ペパーミントバトラーがブラコに魅了され愛してしまった」…というところを拾ってないので、ラストのビンタがすごく唐突になっているわけですが、まあ、ペパーミントバトラーがブラコに「赤ちゃんが欲しい」とか言うのもちょっと生々しいし、不穏当と判断されたのもしかたない気はします。

ただ、実際のところ日本語版の「ペパーミントバトラーが唐突にブラコへの愛を語りだしてバブルガムを殴る」っていうのも、意味不明だからこそ面白くて、個人的にこれはこれで笑えるので、悪くないと思っています(ATみたいな作風だと、しかたなくそうなっている説明不足の唐突な展開や不自然なシーンも、ギャグとして成立してしまうので、ある意味得ですね)。

71話Bパート『赤が欲しい!!(Red Starved)』

赤いルビーだと思って緑のエメラルドを持ってきたフィンに対して、吹き替え版だとジェイクが「お前、目が悪いんだな、でもあんまり気にすんな」と言いますが、オリジナルだと「You're a little color blind.And there's nothing to be ashamed of.」…つまり「お前、ちょっと色覚異常なんだな、でも恥じることじゃねえよ」と、ハッキリ言っています。

フィンはいわゆる「色弱」という設定であるようです。これを書いてる私自身が色弱なんですが、色弱だと明るい場所だとちゃんと色がわかっても、暗い場所だとその区別が苦手だったりするんですよね。フィンも、明るい場所なら赤と緑がちゃんとわかるんだけど、暗い地下では間違えてしまったんでしょう。

日本吹き替え版は、「color blind(色盲/色弱/色覚異常)」をぼかして「目が悪い」と訳したわけですが、ここに限らず、日本吹き替え版では現実の病名や体質名を出すのは基本的に避けているようです。

ただ、なんでわざわざフィンが色弱という設定がここで登場したのかを想像すると、この作品を見ている色弱の子供たちへ向けたメッセージなのだと思います。「フィンみたいな人気アニメの主人公でも色弱だったりするんだよ」という描写があることで、現実の色弱の子どもたちが勇気づけられる部分はやっぱりあると思うんですよね。フィンの親友であるジェイクも「恥じることじゃない」と言ってくれていますし、色弱は決して珍しいものではなく、引け目に感じたり深刻に気にしたりすることは無いんだ…と励まされるのではないかと。その点から言うと、日本語吹き替え版も、ここは「目が悪い」とぼかしたりせず、「色弱」あるいは「色の区別が苦手なんだな」とはっきり言わせたりしてもよかったんじゃないかな、と思ったりします。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
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73話Bパート『悪魔の血(The Pit)』

ジェイクがサマンサと対面するシーンで、吹き替え版だとジェイクが「わんこ…いぬ…ジェイクだ!」と名乗るセリフは、オリジナルでは本来「J・T…」と名乗りかけていて、ちょくちょく作中に登場する本「Mind Games」の著者「J・Tドーグゾーン」が、実はジェイクであることを示唆するシーンでした。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
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78話Bパート『あの頃に戻りたい(Bad Timing)』

ランピーがキャンディ王国城を襲撃したとき、バブルガムはジョニーに「あなたはテーブルクロスの下に隠れてて。そこに特別なガムがあるから、悪者がドアを壊したらそれを噛むのよ」と言いつけますが、このガムはオリジナルだと「シアン化物入りのガム(cyanide-laced gum)」となっています(毒物!)。

つまり…バブルガムはどうやら「敵がドアを破って侵入してきたら、敵の手にかかって殺される前に、自分から毒を飲んで死になさい」と、もしもの時には自死するようジョニーに案内していたんですね。

まあ、太平洋戦争中の集団自決とかを想起させますし、ちょっと過激すぎて吹き替え版ではここを「特別なガム」とぼかしてしまったのも仕方ないなと思います…。

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87話Bパート『リッチな坊や(Gold Stars)』

序盤のシーン、ウーの王様が手下のトロントのことを「きみは人を見る目があるな。それに忠実だ」と褒めますが、オリジナルだと「忠実」ではなく「good dog(良い犬だ)」と言っています。

そう、トロントって実は「犬」なんですね!

トロントを犬だと裏付ける資料として、製作スタッフのSteave Wolfhard氏は「ツリートランクの結婚式」の「没になったトロントの初登場シーン」を公開しているのですが、そこでもトロント柴犬(Shiba Inuであると書かれています。

ほとんどの視聴者はトロントのことをリスだと思っていたんじゃないでしょうか?私もトロントをリスだと信じて疑わなかったので、犬だと知ったときは結構驚きでした。

おそらく、吹き替え版で翻訳を担当した方もトロントをリスだと思っていて、リスであるはずのトロントが「good dog」と呼ばれているのがピンとこなくて、「犬=人間に忠実」という比喩だと解してこのセリフを「忠実だ」と訳したんじゃないかと思います。

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88話Aパート『エバーグリーン(Evergreen)』

恐竜のガンターに「あなたはぼくのパパ?」と聞かれたエバーグリーンの返答は、吹き替え版だと「違う。お前に魔法をかけてそう思わせているだけだ」ですが、オリジナルだと「違う。だが、私はお前の卵を盗んでお前の脳を突然変異させたのだ」と言っていて、どうしてガンターは他の恐竜と違って2足歩行して喋れるのか?という疑問の説明になっていました。

卵を盗んだり脳を突然変異させたというあたりが、残酷だからそのまま訳さなかったのでしょうか。

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93話Bパート『とある日記(The Diary)』

ジェイクとTVが日記を読んでいるシーンで、破られる直前のページの筆跡を見てTVが「eの形が崩れてる」と言いますが、ここはオリジナルだと「eが全てcrab(カニ)になってる」と言っています。

この後のシーンで、ジェイクたちが、日記の持ち主であるBPの過去を勝手に想像して「彼女はカニの手になった」と言い出すくだりがあって、なんでカニの手なんだ?と思っていたんですが、つまり「eがカニになってる→手がカニになったんだ!」って連想だったんですね。

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99話Aパート『バブルガムの失脚(Hot Diggity Doom)』

・「バブルガムの失脚」、選挙で負けたバブルガムが怒ってウーの王様やトロントたちを「ロクデナシ」呼ばわりするシーンがありますが、これはオリジナルでは「dillweed」と言っています。dillweed(ディルウィード)とは卑劣な人間への罵倒語だそうです。

その後、キャンディ王国を出ていくバブルガムに対して、フィンが「これからどうするつもり?」と聞くシーンがあるのですが、オリジナルだとそういうことは言っていなくて、「ディルウィードが何かわからないんだけど…」と聞いています。つまり、本来ここは「バブルガムが大変な目に遭ってるのに、いま聞くことかよそれ!!」って感じでフィンがボケてるシーンなんですね。

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116話Aパート『剣のフィン(I Am a Sword)』

AT115話「剣のフィン」、吹き替え版では盗賊プリンセスが「あたしは生まれつき病気持ちで、父親にも母親にもキスしてもらえなかった」と身上を語りますが、オリジナルだと「自分は生まれつき狂犬病で、そして両親は自分を愛してくれなかった。なぜなら両親ともに伝染性単核球症(mono)だったから」ということを言っています。
伝染性単核球症は、唾液を介して感染するので別名「キス病」というそうで、「両親にキスしてもらえなかった」という日本語版の訳は、なるほどという感じです。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

また、最後のほうで吹き替え版ではビーモが「フィンはなんでこんな目に遭ったわけ?」と尋ねると、ジェイクは「世の中ってのはヘンテコでな、妙なことをするやつもいるってことよ」と答え、ビーモはさらに「ジェイクが言ってるのは、悪い奴はなんでか知らないけど悪いやつで、それが現実だってこと?」と言いますが、オリジナルとは会話の意味が結構違います。
まずオリジナルではジェイクのセリフは「BMO,it's a wooly bully world.people crazy always.」で「世の中ってのはウーリー・ブリーで、人々はいつも狂ってんだ」と言っています。「ウーリーブリ―」とは要するに意味不明な言葉(直訳したら『毛むくじゃらのいじめっ子』)なので、ここは「ヘンテコ」というニュアンスが合ってるのだと思います。
ただ、それに続くビーモのセリフは本来「you mean some people are just pure city sidewalk boom-boom from a rat donk and that's all there is to it?」で…つまり「ジェイクが言いたいのは、ある種の人々は清潔な都市の歩道にウンチする阿呆なネズミで、それが全てだってこと?」みたいな感じでしょうか。ジェイクの返答を聞いてビーモがヘンな例え話をする、というのがポイントなので、吹き替え版だとその面白さがあまり出てない気はします。

118話Aパート『お話パンケーキ(Five Short Tables)』

5つの短い物語が示されて、最後に共通するテーマはなんだったのかを問うという「キューバー回」を、キューバーじゃなくてアイスキングがやっているのがこのエピソードなのですが、終盤のセリフの意味が吹き替え版とオリジナル版とでだいぶん違います。

吹き替え版だと、アイスキングは「フィオナとケイクは朝食のテーブルにいた。ガムボールは周期表を調べておった。フレイムプリンスは本に火をつけてしまいおった。紫のヘンテコなヤツは咳の薬を飲みおった。アイスクイーンは結局フィオナとケイクに負けてしまいおった。誰かさんの真似をして聞いてはみたが、テーマなどなさそうじゃの。そうじゃ、テーマがないのがテーマなんじゃ」と言って、今回は秘密のテーマなど無いという結論でまとめてしまいます。

ところが、オリジナル版だとアイスキングの言ってることは違っていて、ちゃんとテーマが何なのか語っています

オリジナル版だとアイスキングは「フィオナとケーキは朝食をとって(at the breakfast table)いた。ガムボールは周期表(periodic table)を調べていた。フレイムプリンスは目次(table of contents)に火をつけた。紫色のやつ(ランピー)は...大さじ(tablespoon)1杯のシロップを飲んでいた。そしてアイスクイーンも...テーブル的なことをしたはずじゃ、たぶん…」てなことを言っていて、つまりそれぞれのエピソードで登場人物が「テーブル(table)」という言葉を使っているのが共通するテーマなんだよ、ということだったんですね(※アイスクイーンは「今そのことは保留にしないか」という意味で「Why don't we table this for now」と言ってるシーンがあります)。

で、吹き替え版でアイスキングが「テーマなどなさそうじゃの。そうじゃ、テーマがないのがテーマなんじゃ」と言っている部分は、オリジナル版だと「これらは普通の物語とは違う。短いんじゃ。こう呼ぼう...グレーブル...いや...テーブルスじゃ!(They're not like regular stories. They're shorter. I'll call them...grabl-- No -- tables!)」と言っているセリフでした(吹き替え版のセリフには反映されていないのですが、キューバーがホログラムピラミッドを使って見せてくる短い物語は「グレイブル(Grayble)」と呼ばれているという設定があります。グレイブルという言葉なんて知らないはずのアイスキングが、偶然その言葉を思いついてしまう、ってギャグなんですね)。 

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

それでラスト、一連のアイスキングの様子を見ていたキューバーは、吹き替え版だと「やれやれ、ひどい落ちだ。これじゃ私の評判まで落ちてしまうぞ」と悲しそうに呟いて終わりでしたが、本来のオリジナル版では「もう二度と、テーブルを前と同じように見ることはできないな…(I'll never look at tables the same way again.)」と言っていました。アイスキングが「短い物語のことをtablesと呼ぼう」と「テーブル」に勝手に新しい意味を付け加えたりしたから、キューバーは「もうテーブルを前と同じようには見られないな」…と感想を述べたわけです。

以上のように、本来はテーマの存在がちゃんと最後に明かされていたのを、吹き替え版ではそのあたりのニュアンスをばっさりカットして、「あると思わせた秘密のテーマが実は無くて、その宙ぶらりんな結論にキューバーがひどいオチだとツッコむ」という脱力系の笑いに変えています。

本来の内容に反して「テーマなんて無い」ということにしてしまうのはかなり大胆な変更じゃないかと思いますが、この回は、テーマ部分が「tableという単語とそれを使った熟語」という、英語固有の表現に基づくネタなので、日本語の会話には置き換えることが難しく、セリフの意味を大きく変えてしまったのも理解できることではあります。つくづく翻訳の難しさを感じます。

118話Bパート『父と娘のカード・ウォーズ(Daddy-Daughter Card Wars)』

・エピソードの最初のほうで、チャーリーがビーモのことをタロットカードで占っており、そこでチャーリーは「ビーモは男だって出てる」 という結果を告げたあとで 「ウソだよ。これは良い子って意味」とビーモに言うシーンがありますが、これはこの後のチャーリーのセリフを踏まえるとさらなる意図が見えてきます。 

ビーモが海に飛び込んだ時、吹き替え版だとチャーリーは 「ビーモが沈んじゃったよ!」と言うのですが、じつはオリジナルだとチャーリーは「彼女は石みたいに沈んでった!」と言っており、ビーモに女性を指す三人称「she」が使われています。

Madman Entertainment/『Adventure Time: The Complete Collection』より
(C)Cartoon Network.A TimeWarner Company.

つまり、ビーモが男というのを「嘘だよ(kidding)」と否定して、さらにビーモを「彼女(she)」と呼んでいるあたり、チャーリーはどうやらビーモのことを女の子だとみなしているようです

元よりビーモはロボットであり決まった性別が無いユニセックスなキャラクターですが、こうして女性の代名詞で呼ばれているのは珍しいシーンだと思います。